2024-3-6 17:42 /
何年も前だし何がダメだったのか殆ど覚えてないのだが、言動がエキセントリックすぎたのかヒーローとして扱われ過ぎてたからか……
でも今回の「サブマリン」はすんなり入っていけた。少年犯罪を扱いながら重くなり過ぎず、軽やかなユーモアを織り交ぜているのも好感触。
陣内は基本無茶苦茶な人なのだが、今作はそのどうしようもなさや、憎めないダメさ加減も「しょうがないなあ」って感じで受け止められた。
全面的にいい人とは言い切れないし、断じていい大人でもないのだが、その無茶苦茶さを許したくなってしまういい奴ではある。
弱いものいじめが大嫌いで歯に衣着せぬ物言いも痛快。
名言は随所にちりばめられているが、タイトルに挙げた箇所と、人生を麻雀の役にたとえた終盤が特に印象的。

「重力ピエロ」の強姦魔や「マリアビートル」の王子など、伊坂作品には絶対悪を体現するような同情の余地ない人物も登場するのだが、今回は少年犯罪と括っても「過失の事故」を主軸に据えているので、そこまで陰惨な方向に傾かない。
これがもしリンチやいじめだったら、加害者と被害者の対立構図がよりハッキリして後味悪くなってただろうな……。

残虐な少年犯罪が報道されると極刑になればいいのにと思ってしまうが、若林のように本当に反省し、更生を志す人間もいる。
被害者と遺族が加害者に望むことといえば、早い話「幸せになってほしくない」の一語に尽きるのだが、許されない・救われないことこそ報いだと自戒する加害者を断罪し続ける世間の想像力のなさは、恐ろしくて少し悲しい。もちろん、そこには私自身も含まれるのだが……

単純なハッピーエンドじゃないし、わかりやすい正解は提示されない。でもそれでいい。たとえフィクションでも、この種のテーマを唯一解に落とし込むのは不誠実で嘘っぽい。
作中で武藤も言っていたが、わからなくても悩み続ける、答えなど存在せずとも考え続けるのをやめないのが、他者と理解し合うのが難しくとも理解しようとする姿勢は捨てない、人間に課された課題にして許された誠意なのだ。

終盤の急展開はいくらなんでも偶然が連鎖しすぎて都合が良すぎる気がしたが、伊坂作品だしなあ……でなんか許せてしまった。
余談だが、ジャズの描写が素晴らしい。そっち方面に造詣が深くない私も、動画サイトを漁りたくなるような鮮烈な演奏描写に痺れてしまった。チャールズ・ミンガスやローランド・カークの音楽、聴きたい!
惜しむらくは木更津さんにもうちょっと活躍してほしかった。
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