2012-8-21 21:21 /
只能说一句话:太棒了。
强推片段二中青峰看着黄濑带来家里各种颜色的物品却发现少了他最在意的那一头金黄的这个片段美得我(bgm38)
作为我第一次看的全日文的小说真的太值了【虽然按意思大概啃食有点辛苦TVT

片段一:青峰国中偷拍的黄濑照片
そこには、一枚の写真が入っていた。もう6年ほど前に撮った写真だが、ほとんど封筒から出すこともないまま保管していたので、それはまだ鮮やかさを保っている。被写体は、中学時代の今より幾分小柄な黄瀬涼太だ。
カメラを向けられていることに気付いていないのか、映っている黄瀬の顔は横顔で、ジャージの裾を捲り、すらりと伸びた白い手足を存分にさらしていた。
恐らく水の飛沫か何かが飛んでいるのだろう。それに日差しが当たって、やけにきらきらとしている。それが眩しいとでも言いたげに、黄瀬は口元を笑みの形に綻ばせながらも軽く目を細めている。はっとするほどに、やわらかで美しい横顔だった。
背景は澄み切った空の水色と、それから黄瀬の白い腿あたりまでが薄い青に染まっている。海だ。
この写真を撮ったのは、青峰だった。

中学時代、合宿で海の近くまで行ったことがあった。強豪中学の合宿とは言え、遊びたい盛りの少年たちだ。昼休憩のときに合宿所を抜け出して近くの海辺に行くことがあった。遊泳所ではなかったので泳ぐことはできなかったが、その分ほかに人もおらず、十分に羽を伸ばすことができた。
そこにカメラを持って行ったのは、青峰ではなく桃井だった。
「卒業アルバムのための写真を何枚か撮ってきてって委員会から頼まれているのよ」
絶好の機会でしょ、と少女は笑った。ふうん、と乏しい反応しか示さない青峰に、「青峰君も手伝ってよね」とカメラを押し付けられたのだ。
どうしてオレが、と思いながら、砂浜から水辺ではしゃぐチームメイトを何枚か撮った。それからふと視線を動かすと、袖を思いきり捲り、仲間と海水を掛け合っていた黄瀬の姿があった。日差しが惜しみなく降り注ぐ中で、水しぶきが光っていて、黄瀬はその眩しさに瞼を細めた。その姿にカメラを向けてしまったのは、本当に無意識のことだった。
青峰がシャッターを押したあとで、視線を感じたのかふと黄瀬がこちらを向き、小首をかしげる。
「青峰っち? 今、こっち撮った?」
「……撮ってねえよ」
撮った、と素直に言えなかったのは、何故だったのだろう。

後日、桃井がこっそりとこの写真の入った封筒を青峰に渡してきた。その時の桃井とのやり取りも、覚えている。
「この写真、青峰君が撮ったのよね?」
「あ?」
そうして差し出された写真に、青峰は言葉を失った。黄瀬はもともとモデルをやるくらいには美しい少年だったが、現像された写真の黄瀬は、柔らかで優しげで、それでいて、見ていると胸が苦しくなるようだった。
「写真って不思議だよね……。撮った人の世界をカメラを通して表現しちゃうんだから」
桃井のその言葉に、青峰は何も返すことはできなかった。
この写真は委員会には提出しないから青峰君に上げる。焼き増しは一枚もしていない、と桃井は告げた。それから今にかけて、桃井と青峰は、そのときのその写真の話は一切していない。それは、青峰が、――あるいは桃井も――ずっと胸の奥に秘めてきたことだった。

あれから、中学を卒業し高校を卒業し、大学に入学した。それだけの時間が経った今ですら、青峰はこの写真の存在を黄瀬に告げることはできない。
撮った人の世界をカメラを通して表現する、と桃井はそう言った。その言葉によるのなら、これを撮った中学時代の青峰の世界の中で、黄瀬は胸を締め付けるほどに美しい存在だったのだろう。
青峰はまたその写真をしまって、ぐっと唇を噛む。
そうだ。確かに青峰はこの頃、黄瀬のことが、好きだった。当時は恐らく無自覚だったのだろうが、この写真を見ると否定することはできない。
それは言葉にすることすらせずに遠い昔に終わったはずの恋だった。それを今になって蒸し返されて、余裕を失ったのだろう。
昨夜の黄瀬のあの、赤く染まった顔が蘇る。黄瀬は恐らく中学の頃からずっと、自分に恋をしている。それなら青峰はどうなのだろうか。
不自然な同居を始めて4日目の夜は、そんならしくもないことを考えながら眠りについた。

そこには、一枚の写真が入っていた。もう6年ほど前に撮った写真だが、ほとんど封筒から出すこともないまま保管していたので、それはまだ鮮やかさを保っている。被写体は、中学時代の今より幾分小柄な黄瀬涼太だ。
カメラを向けられていることに気付いていないのか、映っている黄瀬の顔は横顔で、ジャージの裾を捲り、すらりと伸びた白い手足を存分にさらしていた。
恐らく水の飛沫か何かが飛んでいるのだろう。それに日差しが当たって、やけにきらきらとしている。それが眩しいとでも言いたげに、黄瀬は口元を笑みの形に綻ばせながらも軽く目を細めている。はっとするほどに、やわらかで美しい横顔だった。
背景は澄み切った空の水色と、それから黄瀬の白い腿あたりまでが薄い青に染まっている。海だ。
この写真を撮ったのは、青峰だった。

中学時代、合宿で海の近くまで行ったことがあった。強豪中学の合宿とは言え、遊びたい盛りの少年たちだ。昼休憩のときに合宿所を抜け出して近くの海辺に行くことがあった。遊泳所ではなかったので泳ぐことはできなかったが、その分ほかに人もおらず、十分に羽を伸ばすことができた。
そこにカメラを持って行ったのは、青峰ではなく桃井だった。
「卒業アルバムのための写真を何枚か撮ってきてって委員会から頼まれているのよ」
絶好の機会でしょ、と少女は笑った。ふうん、と乏しい反応しか示さない青峰に、「青峰君も手伝ってよね」とカメラを押し付けられたのだ。
どうしてオレが、と思いながら、砂浜から水辺ではしゃぐチームメイトを何枚か撮った。それからふと視線を動かすと、袖を思いきり捲り、仲間と海水を掛け合っていた黄瀬の姿があった。日差しが惜しみなく降り注ぐ中で、水しぶきが光っていて、黄瀬はその眩しさに瞼を細めた。その姿にカメラを向けてしまったのは、本当に無意識のことだった。
青峰がシャッターを押したあとで、視線を感じたのかふと黄瀬がこちらを向き、小首をかしげる。
「青峰っち? 今、こっち撮った?」
「……撮ってねえよ」
撮った、と素直に言えなかったのは、何故だったのだろう。

後日、桃井がこっそりとこの写真の入った封筒を青峰に渡してきた。その時の桃井とのやり取りも、覚えている。
「この写真、青峰君が撮ったのよね?」
「あ?」
そうして差し出された写真に、青峰は言葉を失った。黄瀬はもともとモデルをやるくらいには美しい少年だったが、現像された写真の黄瀬は、柔らかで優しげで、それでいて、見ていると胸が苦しくなるようだった。
「写真って不思議だよね……。撮った人の世界をカメラを通して表現しちゃうんだから」
桃井のその言葉に、青峰は何も返すことはできなかった。
この写真は委員会には提出しないから青峰君に上げる。焼き増しは一枚もしていない、と桃井は告げた。それから今にかけて、桃井と青峰は、そのときのその写真の話は一切していない。それは、青峰が、――あるいは桃井も――ずっと胸の奥に秘めてきたことだった。

あれから、中学を卒業し高校を卒業し、大学に入学した。それだけの時間が経った今ですら、青峰はこの写真の存在を黄瀬に告げることはできない。
撮った人の世界をカメラを通して表現する、と桃井はそう言った。その言葉によるのなら、これを撮った中学時代の青峰の世界の中で、黄瀬は胸を締め付けるほどに美しい存在だったのだろう。
青峰はまたその写真をしまって、ぐっと唇を噛む。
そうだ。確かに青峰はこの頃、黄瀬のことが、好きだった。当時は恐らく無自覚だったのだろうが、この写真を見ると否定することはできない。
それは言葉にすることすらせずに遠い昔に終わったはずの恋だった。それを今になって蒸し返されて、余裕を失ったのだろう。
昨夜の黄瀬のあの、赤く染まった顔が蘇る。黄瀬は恐らく中学の頃からずっと、自分に恋をしている。それなら青峰はどうなのだろうか。
不自然な同居を始めて4日目の夜は、そんならしくもないことを考えながら眠りについた。


片段二:青峰在黄濑离开后回顾房间
ここ数日で、青峰のリビングには随分と物が増えた。黄瀬が持ち込んだものだ。フローリングの上には観葉植物が置かれ、テーブルの上には灰色のマグカップと赤いミルクパンが置かれている。壁には鮮やかな青の絵が掛けられ、ソファには白いCDジャケットが見えた。部屋の隅には、色とりどりの酒瓶が置きっぱなしにされている。
かつて青峰の部屋が、こんなにあらゆる色彩で満たされたことはない。いつだって必要なものしかなくて、殺風景で、それでも青峰は自分の部屋に戻ってくるたびに安堵した。黄瀬がこの家に転がり込んでくる前、今日と同じ雨の中を、痛む足を引き摺ってこの部屋に帰ってきたときも、確かに青峰は安堵したのだ。殺風景な部屋は、確かに青峰にとって心地の良いものだった。
それなのに今日、同じく雨の中を帰ってきたこの部屋に、青峰は違和感を覚えて落ち着かない。違和感の正体は、この部屋が色とりどりになっているからではない。足りない色があるからだ。それに気づき、青峰は拳で小さく壁を叩く。くだらない話だ。この部屋には、あのヒヨコ頭の黄色がない。それだけだ。
ただそれだけなのに、何もかもがすべて、褪せて見えた。


片段三:青黄两人确定心意
「勝手なことばっか言ってんな。おい黄瀬」
「な、なんスか……」
「メシ、うまかった」
息を吸って、はっきりとそう言うと、黄瀬はぽかんとした顔で青峰を見た。最初の夜に黄瀬に「おいしかったか?」と問われて答えなかったことが、ずっと胸につかえていた。これだけのことを告げるのに、随分と長くかかってしまったものだ。青峰は胸中で苦笑する。
それから、勝手に置かれた、場所を取って仕方ない赤い鍋セットのことも、趣味じゃないのに掛けられた海の絵のことも、置きっぱなしの白いCDや色とりどりの酒瓶のことも、文句を言いたい。それから、それから。
言いたいことはたくさんあるはずなのに、不思議なものでうまく言葉に表現できない。しかたないので青峰は、言いたかったほとんどの言葉を飲み込んで、一番言いたかったことだけに意識を集中させる。
「あと、人が気持ちよく寝てるときに勝手にキスなんてするんじゃねえよ。……するなら、起きてるときにしろ」
この言葉に黄瀬の瞳が大きく見開かれ、左の眦からぽろっと滴が零れる。それに青峰はらしくもなく慌てて狼狽し、またバスタオルをその顔にかけた。
「さつきにシバかれるっつってんだろ」
「そんなことオレは知らないっスよ」
タオルの下でくぐもった声を漏らす黄瀬が、ふとその額を、青峰の方のあたりに付けてくる。途端に伝わってくる熱に、バスケをしていないというのに胸の奥が熱くなる。それから、一番言いたくて、しかし未だに伝えられていないことを告げていないことに気付いた。
「黄瀬」
「なんスか」
濡れた黄瀬の瞳と視線を合わせ、短い言葉を告げる。
それを聞くと黄瀬は瞳を揺らして微笑み、それからまた、青峰の肩に額をつける。詰めていた息を吐き出して、その背に腕を回しながら、黄瀬の後ろに広がる自分のリビングを見た。いつの間にか、この部屋は――青峰の世界は――鮮やかさを取り戻している。
それでもやはり自分の腕にあるこの色が、一番鮮やかで綺麗だと、そう青峰は思った。


片段四:黄濑去美国后的青峰
PCの電源を落としてから、黄瀬が置いて行った荷物がそのまま放置され、やけに色鮮やかになったリビングを見やり、それからPCの奥に追いやっていた紙袋を取り出す。今日の帰り道に青峰が買ってきたものだ。紙袋の中には、洒落た包み紙に包まれた、黄色のマグカップが入っている。黄瀬が青峰に買った灰色のマグカップの色違いだ。たまたま立ち寄った店で見かけて、思わず買ってしまった。同じ色をした男に使わせればいい、そんなことを考えながら。だがこれは、黄瀬が一か月後にこの部屋にやってくるその時までの秘密だ。

それから、もう一つだけ、青峰は黄瀬に言っていない秘密がある。それは、あの中学時代の青い写真の存在だ。あれについては、まだ黄瀬に言うつもりはない。ずっと前から、恋情が確かにそこにあったことを告げるのは、もっとずっと先でいい。
例えばいつか、青峰が黄瀬を怒らせて黄瀬がこの部屋を出て行ってしまって、この色とりどりの部屋が色褪せてしまったときにでも、あの写真を取り出そうと思う。またこの部屋に黄瀬を連れ戻して、あの写真を見せて、もうずっと前から、青峰にとって黄瀬のいる世界があれほどに鮮やかで美しいものだということを示せばいい。
だからあの写真は、そのときがくるまで、色とりどりのこの部屋の向こうに、しまっておくのだ。

FIN~