2013-5-12 14:05 /
11.終章「縁結ビ」  

琥珀

今日もやはり青空に雨か。

なぜ妖狐が花嫁を迎える日は決まって天気雨なのか。

今日の君の姿を見て、その答えが分かったよ。

こんなにきれいな花嫁なら、ほかの奴らに見せてたくなくなるのは当然だ。

君の白無垢姿も艶やかだが、

俺しか知らない君の無垢な魂も、変わらず薄紅色に輝いて美しい。

ああ、やはり君は甘いなあ。甘くて、蕩けそうだ。

八重桜か。すぐに葉桜の季節だな。

来年も、再来年も、その次の年も、毎年君と俺と二人で、桜を見よう。

昼の桜でも、夜桜でもいい。

満月の夜?

そうだな。満月の夜でも大丈夫だ。君は俺が守るから。

子どもが生まれたら三人で、いや、四人、五人、何人でもいい。その時は皆で見に行こう。

多い?

どうかな。

君とこうやって、こんなふうに…睦み合っていれば、あっという間だと思うが…

まだ日が高いか?

君の言うとおり、日が沈むまでには間があるが、夜まで待ち切れそうにない。

ほら、俺の首に手を回して…

なぜって。

こうしてっと…このまま君を屋敷の奥に、日の届かない寝所に運ぶとしよう。

それならいいだろう。

手に入らないと思っていた君が、こうして俺の花嫁になったんだ。

多少浮かれるのは許してほしいなあ。

君が俺と生きることを選んでくれて、感謝している。

愛している。