───それは特別な記憶。俺はあの日、初めて未来に光を見たのだ───
幼い頃はいつも諦めてばかりだった。
俺は、未来のことを考えたことがなかったのだ。
いつもの場所で、いつもの人たちと、理不尽に耐えながらただ生きていく。
そんな毎日が、永遠に続くものだと思っていた。
「空の果てには、何があるのだろう?」
幼い頃、一度だけ父にそう尋ねたことがある。
俺が幼少期に暮らした町は雨がよく降る荒れたところであったが、 一度だけ、綺麗な空を見せたことがあった。
隔離された町、ヴァルツヘイムは俺の故郷だ。
首都から南に離れた場所に位置する、灰色と鉄の匂いのする工業地帯。
そして、”不要”の烙印を押された者たちが、収容される場所でもあった。
ヴァルツヘイムでの生活が、どんなに辛く、苦しくても、それが俺たちの運命だから。
仕方のないことなのだと、諦めてばかりだった。
この町に住む人々の、命の価値は安い。
我々を切り捨てた国からすれば、生きていたって死んでいたって同じ存在なのだ。
未来の自分がどうありたいかなど、思考を巡らせるだけ無駄だと思っていた。
……だが、まさかあの日、俺の人生を一変させる出来事が起ころうとは。
幼い俺は圧倒された。
圧倒されて、目の前の光景に釘付けになったんだ。
これは、"灰色"と”家族”と、”空”の記憶。
7年前、故郷『ヴァルツヘイム』で暮らしていた頃の話だ。
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幼い頃はいつも諦めてばかりだった。
俺は、未来のことを考えたことがなかったのだ。
いつもの場所で、いつもの人たちと、理不尽に耐えながらただ生きていく。
そんな毎日が、永遠に続くものだと思っていた。
「空の果てには、何があるのだろう?」
幼い頃、一度だけ父にそう尋ねたことがある。
俺が幼少期に暮らした町は雨がよく降る荒れたところであったが、 一度だけ、綺麗な空を見せたことがあった。
隔離された町、ヴァルツヘイムは俺の故郷だ。
首都から南に離れた場所に位置する、灰色と鉄の匂いのする工業地帯。
そして、”不要”の烙印を押された者たちが、収容される場所でもあった。
ヴァルツヘイムでの生活が、どんなに辛く、苦しくても、それが俺たちの運命だから。
仕方のないことなのだと、諦めてばかりだった。
この町に住む人々の、命の価値は安い。
我々を切り捨てた国からすれば、生きていたって死んでいたって同じ存在なのだ。
未来の自分がどうありたいかなど、思考を巡らせるだけ無駄だと思っていた。
……だが、まさかあの日、俺の人生を一変させる出来事が起ころうとは。
幼い俺は圧倒された。
圧倒されて、目の前の光景に釘付けになったんだ。
これは、"灰色"と”家族”と、”空”の記憶。
7年前、故郷『ヴァルツヘイム』で暮らしていた頃の話だ。