お母さんの「やさしい手」に気づいたのは、おじいちゃんを家族で病院にお見舞いに行ったときのこと。おじいちゃんは72歳。ガンの大手術を行い、最近、胸が苦しくなることが頻繁に起こりよくお母さんの手でさすってもらうようになりました。おじいちゃんは目を閉じて大きく息をし、苦しくなり吐きそうになりました。「お父さん、大丈夫!」口元にさっと手を出すお母さん。「お父さん。遠慮しないで。手で受け止めてあげるから。」おじいいちゃんは、下を向いたまま涙を流していました。「おじいちゃん、私の手のひらの中に出してもいいよ。」と私も言いました。帰りの車の中、私はお母さんに言いました。「お母さんは偉いと思う。おじいちゃんが『ゲェー』ってやったとき、普通の人だったら、『ゴミ袋、ゴミ袋』って言うと思うよ。自分の手を出すなんてできないと思う。」。お母さんは言う、「何を言ってるの!!おじいちゃんのものなら、ちっとも汚いなんて思わない。」、「できるかぎり、一生懸命お世話して、早くよくなるといいね。」とお母さんは祈るように言いました。8月11日、おじいちゃんはなくなりました。
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