#1 - 2018-11-2 00:10
flankoi (命が赤潮)
百合を語るとき、私はよく「美学」という言葉を引っ張り出すが、その理由はまさに「薄墨桜」にあるような気がする。表情も主張も乏しい冴木さんではあるが、内に燃えるような想いを潜め、あの「風花」を書す…という構図には、名画にも遜色しない力強さと、美しさと、エモさがある。こういう文学的な悲恋は、日本文学の特徴の1つだと私は強く思う。こういう感性が無ければ、ボリューム不足で万葉集が千葉集になったのではないか。冴木さんの恋はまさにそうで、感性以外の何もかもを取り除いた後に、あの「風花」があるんだ。あれほどの美しさが、もはや魔法以外の何物でもない。魔女が実在するかって?恋する女の子は、皆魔女だ。百合を語り続けさえ居れば、私はきっと、この「風花」を永遠に忘れないだろう。