AkatsukiShiro » 日志
【第十一人(1986)】日文对白(自听记)
2015-4-25 16:54 /
テラ 地球の人類は
ワープ航法の発見により
飛躍的な宇宙進出を実現し
数世紀のあいだに
多くの惑星国家を形成した
その後、サバ系・セグル系など
さまざまな異星人と遭遇し
数世紀にわたる
戦争と和解をくりかえしたのち
すべての惑星国家は星間連盟を結んで
宇宙共存の時代に入った
「コスモ・アカデミー」
120年前、新しい時代をになう
優秀な人材を育成するため
星間連盟によって創設された
宇宙学のあらゆる研究ジャンルを持つ
宇宙最高の教育機関である
その大学の卒業生は
すべての社会でエリートとしての地位を約束される
テラ系・サバ系・セグル系
その他の辺境星から
膨大な数の入学希望者がここに集まっていた
「完全防音のカプセルの中で、聞こえるのは、回答を打ち出す自分のキーの音だけ。孤独な頭脳との戦いが、何時間も続いている。」
「三年ごとに行われる入学試験、受験資格に制限なし、第一次予備試験合格率0.1%、第二次予備試験合格率3.8%、最終試験に臨んだ者七千名、僕もその一人」
「あと少しだ、この難関をクリアすれば合格だ」
「受験番号をチェックする」*2
(OK BY73025)
「よろしい、カプセルを出て、ドアB26に行け」
「よかった」
「受験票チェック」*2
「チェックは…あった」
「受験票を受け取って、ロッカー46へ行け」
「次のテストは」
「宇宙遊泳用のスーツ及びヘルメットを着用せよ」
「一体何が始まるんだ…」
「これから最終テストのポイントに向かう、最終テストに残ったのは700名、このシャトルには君たち100名が乗っている。テストは10人一組で行われる、テストポイントごとに10人のグループをランダムに受験番号で呼び出す。では諸君、テストの成果を期待している」
タダ:(最終テスト…一体何をやるんだろう、どんなテストでもクリアして、きっと合格してみせると)
長老:「自信を持って、タダ、お前なら大丈夫。お前は頭もいいし性格もしっかりしておる。それに、小さい頃からの優れた直感力もあるしな」
「第一テストポイント」*3
長老:「宇宙船のパイロットになりたいというお前の夢は分かっておった、しかし、お前がコスモ・アカデミーを受けたいと言った時は、正直驚いたものだ」
「第二テストポイント」*3
長老:「コスモ・アカデミーへの道は長い、試験は三年に一度しかない、しかし、希望への一歩だ。夢は大きい方がいい」
タダ:「長老…」
「第三テストポイント」「受験番号BY73025」*2
タダ:「ぼ、僕だ」
「揃ったか、では、受験票をここに呈出せよ。よし、君たち十名は第三グループ、君たちのテストポイントはアレだ。なにをやるかは行けば分かる」
「入口はどこだ」「あの凹みか」「ロックは」「これじゃないかな」
「早く入れ!」「押すなよ」
「最終テストが実技なんて聞いてなかった」「暗いな」
「古臭い宇宙船だ、漂流しているのかな」
「10人いるか?ロックを閉めるぞ」「よっし!閉めてくれ」
「こんなところで何がやれるんだい」
「安全確認のランプだ」「そろそろヘルメットを取ってもいいところだろう」
「おい!一人多いだ!」
「そんな」「多い?」「一人多い」「本当だ!一人多い!」
「一人多い」「誰が」「どうして」「誰なんだ」
「一グループ10人のはずだぞ」
タダ:「11人いる…一体どういうことなんだ、これは」
「なぜだ、なぜ一人多いんだ」
「シャトルを出る時は確かに10人だったぞ」
「どうなってんだ?いつ増えたんだ」
「誰か最初から人数を数えていた者いなかったのか」
「受験カードは10枚だった」
「コンピューターミスかな」
「まさか、最終テストなんだぜ」
「じゃどうしてた?誰が多いんだ、君か?」
「僕は受験生だ」
「君か?」「オ、オレだって」「俺もそうさ」
「君か?11人目は」
タダ:「ち、違うよ。でも、みんなも顔を見せたらどうだろう、とにかく落ち着かないと」
ガンガ:「そうだな、その通りだ。我々は孤立している、慌ててみても始まらんぞ」
バセスカ:「確かに、そうだな」
バセスカ:「君も受験生か?」
ヌー:「そうです」
アマゾン:「女だ?」
バセスカ:「君が11人目だな?」
タダ:「でも、女性もたくさん受験してるんだ、成績が受ければ女の子だって…」
フロル:「なに?俺のどこが女に見えるって言うんだよ!」
タダ:「だって――」
フロル:「二度と俺のこと女なんて言ってみろう?ただじゃおかねえ。女なんて大嫌いだ!」
フロル:「痛えじゃ、この石頭!」
バセスカ:「コックピットはどこだ?おい!」
タダ:「コックピットはこっちだ!」
フロル:「あ、待ってよ!」
四世:「どうしてんだ?!」
アマゾン:「重力場調整装置が故障したんだ!」
バセスカ:「コックピットへ急げ!」
ガンガ:「開閉ボタンはどこだ」
タダ:「そこにスイッチが…」
ガンガ:「ええ?あ、これか」
バセスカ:「メインコンピューターを作動させろ」
タダ:「パワーボタンはそっちだ」
ガンガ:「分かった」
タダ:「船内図を出そう」(?)
ガンガ:「おい、重力場の方を何とかしてくれ」
アマゾン:「了解」
ガンガ:「君、動力の方を調整してくれ」
四世:「分かった、なんとかなるだろ」
ガンガ:「では今すぐ爆発場所を調べてみる」
タダ:「頼むわ」
バセスカ:「これは何?」
タダ:「爆発物がセットされているらしい、回路を探ってみよう」
ガンガ:「先の爆発は上部中央二箇所、既に非常用シャッターがおりている」
「わかった」「OK」
アマゾン:「重力場調整装置の回路は一箇所ショートしてるぜ」
ガンガ:「他の回路からパワーオン出来ないか」
アマゾン:「やってみる…これか?重力場調整装置は順調だ」
ガンガ:「お手柔らかに頼むぜ」
アマゾン:「すまん」
四世:「くそ、どうなってんだ、これか?ああ!」
アマゾン:「電圧上げすぎたんだ!ドジ!」
四世:「何だと?!」
アマゾン:「ドジだからドジだって言ってんだこのドジ!」
フロル:「こりゃ危ねえな、次の爆発まで20秒しかないぞ」
バセスカ:「20秒?おい、爆発物の回路を早くカットしろ」
タダ:「今探してる!どこだ…このラインのボタンは、このラインは…」
フロル:「あと10秒だぞ、9、8、7、6…」
バセスカ:「おい、まだか」
タダ:「D回路だ!D回路をカットしろ!」
フロル:「みんな、助かったみてえだぞ」
トト:「ああ、よかった」
赤鼻:「ヒヤヒヤしたぜ」
「第三グループの受験生諸君、これから最終テストの課題を伝える。君たち10名は、この船にクルーとして、本日より53日間とどまること」
アマゾン:「53日間?」
赤鼻:「そんなに長く…」
「その間、君たち自身で解決不可能な非常事態が発生した場合、赤い色のボックスにセットされたスクランブルボタンを押せば、テストは中止され、救援を求めることが出来る。その他のコンタクトは一切なし」
チャコ:「このボタンだ」
「53日間の共同生活を達成した場合、君たち10名全員が合格となる、10名のうち一人でも脱落した場合、全員が不合格となる。では健闘を祈る、グッドラック」
石頭:「10名のうち一人でも脱落した場合、10名全員が不合格となる…」
四世:「11人いたらどうなるんだ?」
赤鼻:「始めから非常事態だ」
四世:「なぜ一人多いんだ?!どうするんだ、ん?みんなどうなるんだ」
ガンガ:「では今すぐこいつを押すがいい、そうすればテスト中止、全員不合格、解決ははやいぞ」
ヌー:「誰が11人目かを探すより、他にやることはたくさんあると思う、私たちには」
アマゾン:「そうだよ、俺たちは53日間頑張って合格することが第一だぜ」
バセスカ:「お前たちの言う通りだ、我々は孤立している。11人目だって死にたいわけじゃあるまい、まず全員自己紹介といこう」
四世:「自己紹介?」
バセスカ:「名前と受験番号を」
四世:「受験番号なんて信用できるもんか」
タダ:「僕が手を触れてみるよ」
フロル:「ええ?お前テレパスか?」
タダ:「いや、ただの直感力だけど、言ってることが本当か嘘かくらいはすぐ分かる」
バセスカ:「いいだろう、お前の直感力は先から素晴らしい働きをしている」
アマゾン:「ヒュウ~解決解決、一人づつ握手すりゃすぐ11人目が分かるってわけだ」
バセスカ:「私からいこう、私はサバ系アリトスカ・レのマヤ王ばせスカ、受験番号AQ00820」
四世:「アリとスカ・レ?隣の星だ!」
バセスカ:「では君は?」
四世:「そうです、サバ系アリトスカ・ラのソルダム四世ドリカス。確かにあなたはマヤ王だ、つい最近頃王位を継承されたと聞きましたが、大学へ行かれるのですか」
バセスカ:「いや、私は力試しの受験だ、合格しても国へ帰る、統治しなければならぬでね」
アマゾン:「へえ?王様に貴族の四世ね、こちとらプロレタリアートのテラ系シュシュから来たアマゾン・カナイスとクラ」
四世:「テラがサバより歴史が浅いからといってそう僻むもんじゃない」
アマゾン:「なにを?!」
チャコ:「やめなさいよ!、それどころじゃないでしょうに。僕もテラ系、クエスから来た、チャコ・カカ」
赤鼻:「僕もテラです、テラ系ペロマのドルフヌスタ、みんな赤っ鼻と呼ぶけど」
トト:「サバ系のミスから、トト・ニ」
フロル:「へぇ…俺の手よりでけえな」
タダ:「な、何だよ」
四世:「君もサバ系だろう?サゼあたりの名門かな?大体サバ系には美形が多いからな」
フロル:「サバもテラも知んねえ、俺ん星はヴェネ、どの星系にも属しちゃいねえんだよ」
タダ:「き、君、名前は?」
フロル:「フロル、フロルベリチェリ、フロルってんだ」
四世:「ひどい言葉だ」
バセスカ:「よほど辺境の星から来たんだろう」
四世:「星間標準語習わなかったとしか思いませんね」
フロル:「うるせぇ!役者のオーディションじゃあるめぇし、セリフでパスすん訳じゃねぇだろ!先から聞いてりゃサバだのダラだのそんなもん食えっかい?早く続けるんな(?)」
ヌー:「私もどの星系にも属さない辺境の星ウィヌドーから初の受験生、ヴィドメニール・ヌーム。ヌーって呼んで欲しい」
アマゾン:「誰が11人目かいたかい?」
タダ:「いや、みんな受験生に間違いない」
ガンガ:「サバ系トレドレーガ、ガニガス・ガグトス、通称ガンガ、受験番号PJ42291」
アマゾン:「あと一人だ」
石頭:「サバ系サゼから、アインツバイ」
タダ:「違う」
フロル:「石頭!おめえか?!11人目だな」
石頭:「待って、この人の直感力を試しただけなんだ。失礼した、もう一度頼む。僕はグレン・グロフ、セグル系灰白色星から来た」
アマゾン:「誰が11人目だ?」
タダ:「誰もいない」
四世:「誰もいない?」
アマゾン:「そんな馬鹿な…」
タダ:「本当に誰も嘘をついていないんだ、でもどうして」
バセスカ:「君の名前は?」
タダ:「僕はタダ、タダトス・レーン、受験番号BY73025、テラ系シベリースから来たんだ」
バセスカ:「君の証明は誰がする?それとも君が11人目か」
タダ:「そんな、僕じゃない」
バセスカ:「では誰だ?」
タダ:「分からない、僕の直感ではみんな受験生だ」
バセスカ:「君の直感力とやらお当てにしたのが間違いだった」
アマゾン:「ああ、これで振り出しに戻ったか」
四世:「期待させといて」
バセスカ:「静かに。とにかく船内を見回ることにしよう、必ず二人以上で行動しろ、怪しい素振りの奴がいたらすぐに報告すること」
フロル:「何だよあいつ、勝手にキャプテンづらしやがって」
ガンガ:「あの王様、なかなかの切れ者じゃないか、キャプテンにはもっとも適任だと思うがね」
タダ:(なぜだ…直感力がどうかしちまったのか)
フロル:「しょげんなよおめえ、テストは始まったばかりだからな」
バセスカ:「クルーのキャビンらしいな」
アマゾン:「すごいだ、なんブロックもあるぜ」
フロル:「痛え…」
タダ:「なんだい?」
フロル:「べつに、行こうぜ」
バセスカ:「ロビーのようだな」
アマゾン:「おお、カウンターバーなんかあるぜ」
フロル:「ん、へぇ?いいもんがあるぜ、結構上等なのばかりじゃん、飲むか?」
タダ:「いや」
フロル:「お、おい待ってよ」
タダ:「前に見たような気がする」
四世:「ええ?!」
チャコ:「そりゃそうさ、有名だもの。テラの遠い祖先のロモという彫刻家が制作した宇宙の守護神像っていうんだ、テラの船にはよくレプリカが飾ったあるよ」
バセスカ:「するとこの船はテラのものか」
四世:「弓には何もつがえてないぜ」
チャコ:「それはいつでも論議のまとさ、ある者は平和を伝えると言うし、ある者は愛、ある者は青春、勇気とか希望とか」
フロル:「俺だったら力だな」
ヌー:「宿命(さだめ)、という答えもある」
アマゾン:「下に何か書いてあるぜ、文字みたいだな、なんて読むんだ」
チャコ:「かすれてて全部は分からないけど、エスペランサの航海の無事を願って、エスペランサ、この船の名前だね」
タダ:「へぇ?」
バセスカ:「エスペランサ号か」
タダ:「エスペランサ号…なんだろ、この直感に引っかかるものは…初めて聞く名前なのに」
トト:「あ、向こうにエレベーターがある」
フロル:「おっ」
タダ:「何してるんだよ!」
フロル:「おめえ、テラ系では標準体型か」
タダ:「そうだよ」
フロル:「俺と同じ身長なのに、どうして肩幅が広いんだ?」
タダ:「君が細いんだろ」
フロル:「腕もお前のほうが長いし」
タダ:「君が短いんだろ」
フロル:「ほら、お前のほうが大きいし」
タダ:「早く行こうぜ」
フロル:「おっ、おい待ってよ、おい!」
四世:「どうやって動かすんだ」
バセスカ:「どっかにスイッチが入れば(?)」
タダ:「足をおく、青い線があるはずだけど」
四世:「あ、本当だ」
アマゾン:「上か下か、どっち行くんだ?」
バセスカ:「下だ」
フロル:「下には何があるのかな」
タダ:「機関部だ。上の方は居住区じゃないかな」
バセスカ:「よく分かるな」
タダ:「え、いや、感だよ」
赤鼻:「ここも暗いな」
ガンガ:「全然中が見えないぜ」
フロル:「本当に黒いな、スイッチどこだ?」
タダ:「右の方にあるはずだが」
フロル:「うわ!き、気持ち悪い…何だよこれは」
タダ:「気味が悪い」
トト:「これは電導ヅタですね」
タダ:「電導ヅタ?」
トト:「電気を通す植物です。メーカーの配線に使われていたのが、野生化したんですね」
赤鼻:「何だか、嫌な気分になってきた」
ガンガ:「元はセグル系で発見された鉱物性の植物だ、フロル、安心しろ、君をとって食ったりやせんから」
フロル:「誰がとって食うなんて言ったよ!ちょっとびっくりしただけじゃんか」
フロル:「でっけえ倉庫だな」
タダ:「生活物資の貯蔵庫になってるんだ」
アマゾン:「へぇ?何でも揃ってるじゃないの、こっちは?へぃ、ガラクタばっか」
フロル:「ふん…」
タダ:「重いな、何だろう」
フロル:「手伝おうか」
タダ:「うん、大丈夫だ。ん?痛え!何するんだよ!」
フロル:「おめえの皮膚のほうがかたそうだなあと思ってさ、ごめんごめん」
タダ:「本当にもう、どういう性格してるんだろうな」
チャコ:「えぇ、ぎっしりだ」
赤鼻:「三箱もある」
フロル:「タダが見つけたんだ」
バセスカ:「お前がか?」
アマゾン:「強度調整式のショックガンだ、メモリを最強にすれば人も殺せる」
四世:「こいつが役に立つぞ」
ガンガ:「こんなものがなんの役に立つというんだ?」
四世:「役に立つさガンが、考えてみろ!俺たちは危険の真っ只中にいるんだ。11人目が誰だか分からない以上、身を守る必要がある」
ガンガ:「俺は反対だ、武器は危険をエスカレートさせるだけだ」
トト:「僕たち今、お互いに疑いあっているから」
ヌー:「殺し合いですか」
バセスカ:「よし、多数決で決めよう、銃の所有に賛成の者は」
フロル:「おめえは賛成しねえの?」
バセスカ:「よし、反対の者は」
フロル:「ふん」
バセスカ:「6対5だ、銃を片付けてキャビンのロッカーへ運び込め。お前が反対とは意外だったな」
フロル:「おめえは腰抜けだよ!」
タダ:「フロル、君は銃が使えるのか?」
フロル:「あたりめえよ!俺スゴ腕だぜ!バキュンー!*5」
タダ:「フロル…君は」
フロル:「何だよ?なんでそうジロジロ見るんだよ」
タダ:「いや、どうも僕の直感力も…おかしいや」
フロル:「変な奴だな」
アマゾン:「持ち上げるぞ」
フロル:「よし、んん、うん!」
アマゾン:「どうした」
タダ:「代わろう」
フロル:「余計なことするんな、あ!…ん!あたまきた!くそ」
バセスカ:君と私が勿論だが、トト、 チャコ、赤鼻の三人はまず白だ。フロルのような単純なやつも、11人目じゃありえまい。残りの中で、タダはどう思う、四世?」
四世:「あのテラの直感力のことですか?」
バセスカ:「そう」
四世:「銃を見つけたり、なぜああもこの船のことに詳しいのか」
バセスカ:「あの直感力は曲者だな」
フロル:「ああ、長え一日だったな」
タダ:「いろいろあったからな、あと52日だ」
フロル:「俺このテストに絶対合格しなきゃならんね」
アマゾン:「俺だってそうさ、俺が合格したら宇宙工学コースに入るつもりなんだ」
フロル:「うわ、すげえ」
タダ:「すごい傷だな、アマゾン、どうしたんだ」
アマゾン:「俺の星は狩猟の星だ、俺も生まれたばかりの小さい時から、獣の狩りばかりやってたからね。そのうちエンジニアリングには面白くなって、だからちょっとばかしお勉強なんかしてみようかってわけ」
タダ:「そうか」
フロル:「俺は、合格できりゃそれでいいんだ」
アマゾン:「王様と同じか?力試しってとこか」
フロル:「あんなかっこつけ野郎と一緒にするんじゃねえよ」
アマゾン:「悪かった」
フロル:「いい音だな」
アマゾン:「この部屋にいたクルーが忘れていたらしい」
タダ:「テラ系の言葉じゃギターっていうんだ、大昔からある伝統的な楽器さ」
フロル:「おめえずっと男やってきたわけ?」
タダ:「ええ、どういう意味?」
フロル:「何でもない。でも、この船何で漂流船になっちまったのかな」
アマゾン:「機関部の故障だろ」
フロル:「乗客はどうしたんだろう」
アマゾン:「そりゃ救助されただろうさ」
フロル:「全員死んじまった、ってなこともあるぜ、事によると」
タダ:「全員…死んでしまった」
アマゾン:「ありうるな」
フロル:「そうだ!11人目はそれだ、死んだ乗客の…幽霊だ!」
タダ:「死んだ、乗客…」
バセスカ:「今日で4日目だ。このエスペランサ号は、長期旅行用の客船か移民船だったようだな、上層部は約600世帯の居住区になっており、倉庫には二年から三年分の食料や生活必需品、そのほか、トトたちが見つけた人工菜園や図書室もある。コンピューターの不調のため、詳しい状況は分からないが、レーダーの計測によると、駆動系の壊れているエスペランサ号は、この黒い星の周囲を衛星のように回っている。星の直径は約4000キロ、大気はなし、船の軌道周期は53日間だ」
フロル:「そうか、テストの日数が53日ってのはそれだ、つまり、この船が星を無事に一周すりゃいいわけだ」
バセスカ:「そう、無事にな」
ガンガ:「動いてないコンピューターが結構あるな」
アマゾン:「何箇所もショートしている、配線を取り出して、繋ぎ直さなくちゃならないな、ここは俺がやるから、あっちの回路を見てくれないか」
ガンガ:「分かった」
石頭:「僕も手伝おう」
アマゾン:「あ、頼むぜ石頭、これが修理のマニアルだ」
石頭:「結構切れてるな」
ガンガ:「タダ、E回路の電源を切ってくれ」
タダ:「OK。爆発物はまだこんなに残っている、居住区に50箇所あるな、スイッチ一つでまた爆発するのか…」
声:「タダ、スイッチを入れてくれ、E回路のスイッチを入れるんだ」
ガンガ:「うああああ!」
アマゾン:「ガ、ガンガ!」
フロル:「どうした!ガンガ!ガンガ、おいしっかりしろ!何ボケっとしてんだ!担架だ急げ!」
バセスカ:「どうした!」
四世:「何あったんだ!」
バセスカ:「何をふぬけている!お前のミスだぞ!」
タダ:「担架はこっちだ!」
バセスカ:「タダ!」
タダ:「ガンガを運び出してくれ!」
トト:「ガンガ!」
タダ:「こっちだ!ガンガをオペルームに運び込むんだ!フロル、オペルームのスイッチをオンにしてくれ!左の部屋だ!」
フロル:「分かった!」
四世:「おい、オペだってどうする気だ?誰がやるんだ?出来るやつがいるのか、え?」
タダ:「僕がやる」
四世:「なに?」
石頭:「君は解剖学の知識か実体験があるのか?」
タダ:「長老が医者でその助手をやっていたんだ、なんとかやれる」
四世:「バカな、事故を起こしたのはお前だぞ、ガンガを殺さないという保証がどこにある?今一人でも死んでみよう、全員不合格になるんだぞ」
バセスカ:「やらせてみろ」
四世:「え?」
バセスカ:「もしガンガが死んだら、自分が11名だということを証明することになる、やってみろ」
タダ:「誰か助手を務めてくれないか」
フロル:「俺がやる!俺ちったあ知識があるんだ」
タダ:「じゃ、頼むぞフロル!」
石頭:「僕も手伝おう、知識は対しないので指示を頼む」
タダ:「ほかのみんなは向こうの部屋へ移動してくれ」
タダ:「ショートした時の配線が二本、体の中に入り込んでる、これを取り出すんだ」
フロル:「心電図は正常だ、血液型は分ねえな」
タダ:「なんとかやる」
タダ:「メス。緑色の血だ、気分悪いのか」
フロル:「俺こういうの初めてたんだ」
タダ:「さき知識があるって」
フロル:「俺学校教材のビデオで見たことがあるだけなんだ、大丈夫さ、しっかり助手は務めるって」
タダ:「頼むぞ」
フロル:「任せとけ」
石頭:「タダ、患部はかなり深いぞ、内蔵を傷つけないように気をつけろよ」
タダ:「分かった。あ…ありがとう。(緑色の筋、緑色のリンパ…深いな、しかしすごい筋だ、発達している…あったぞ)フロル、ピンセット!」
石頭:「細いコードがついてる、注意して取り出せ」
タダ:「分かった」
フロル:「よかったな、助かって」
タダ:「ああ、丈夫な男だ」
バセスカ:「これからお前を尋問する。」
フロル:「何だよ、タダはちゃんとガンガを助けたじゃんか」
バセスカ:「タダ、お前はこの船に乗ったことがあるな」
タダ:「こんな船に乗ったのは初めてだ」
バセスカ:「ではなぜコックピットの位置が分かった?居住区が上で機関部が下だと、ドアの開け方スイッチの位置担架のあり場所、なぜそんなにも詳しい!単なる感だけで説明がつくか」
四世:「どうした、答えられないのか?え、直感力?」
バセスカ:「弁明ができないのなら、この場で決を採り、不信票が多ければ、疑いが晴れるまで一室に閉じこもってもらう」
フロル:「そりゃねえだろ王様、いくらなんでも監禁だなんて」
バセスカ:「我々の合格のためだ」
チャコ:「そうさ、誰だって11人目のために不合格になるのは真っ平のはずさ」
赤鼻:「それに死にたくもない」
アマゾン:「まあ、一人多いってことは事実だけどな」
バセスカ:「では、タダの監禁に賛成の者は…5人だ。決まったな、5対4で、タダ、お前を閉じ込めることにする」
ガンガ:「待って!」
タダ:「ガンガ?」
フロル:「ガンガ!」
ガンガ:「あの事故はタダだけのせいじゃない、あの時俺はうっかり手元の安全ロックを切るのを忘れていたんだ、それさえ切っていれば、たとえ電源が入っても事故に遭うこともなかった、だから俺のミスでもあるんだ、納得してくれるな、王様」
フロル:「本当驚いたな、傷口は縫い合わせたばかりだっていうのに」
タダ:「ありがとう、ガンガ。君は僕を疑ってないのか」
ガンガ:「11人目がそうバカをさらすとは思えないんでね」
フロル:「そうだよな、こいつドジばかりやらかしてよ、手に負えねえよ、本当」
タダ:「フロル、ガンガの傷口を見るから、新しいガーゼを出してくれないか」
フロル:「OK」
ガンガ:「タダ、お前が手術をしてくれたのか」
タダ:「う、うん、ヒヤヒヤだったよ、血液型が分からなくて」
ガンガ:「俺の体、全身緑色だったろ」
タダ:「う、うん」
ガンガ:「俺の星はサバ系の中心から、えらく離れたところにあったな、ひどく短命な種族なんだ。星全体を覆っている風土病からのがれることができず、大抵30前で死んでいく、俺はトレドレーガ型緑色クロレラの栽培方式をとりえた一種のサイボーグなんだよ」
タダ:「サイボーグ?」
ガンガ:「まだ実験段階だからな、九歳の時に培養を受けた、このまま生き続けて、染色体異常が認められなければ成功だ。ほかのトレドレーガの人々にも培養できる。もちろん費用がかかるから、最初は数が限られるだな…どうした」
タダ:「いや、大丈夫だ、傷口は繋がっているよ」
タダ:(何だ、この恐ろしく危険な感じは…数が限られる…限られる*3…)
ガンガ:(だから俺は、ぜひともコスモ・アカデミーに入学したい、入学したら宇宙生命医学の研究コースに進みたいんだ。風土病が克服されれば、みんな長く生きられて、より多く働いて、幸福になれる)
タダ:(なぜだろ…なぜ、こんなところに来たんだろ。この船の何かが直感を刺激する)
声:(タダ、スイッチを入れてくれ、E回路のスイッチを入れるんだ。タダ、E回路のスイッチを入れるんだ)
タダ:(あの時、耳元に聞こえた声は一体…テレパス!そうだ、感が狂ったわけ、声が聞こえたわけ、僕の直感力を上回るテレパスがあの10人の中にいるんだ。王様、四世、アマゾン、誰だ…石頭、一体誰なんだ、赤鼻、ガンガ)
フロル:「何だ、こんなところにいたのか、一人で何やってんだ?」
タダ:「え、いや、何持ってるんだ?」
フロル:「酒だ、一緒にやろうぜ。ほい、お前の分、飲めよ。まあ、座れよ」
タダ:「ああ…」
フロル:「53日、早く終わんないかな」
タダ:「まだ一週間も経ってないじゃないか」
フロル:「俺の星、今頃春だ、お前んとこは?」
タダ:「シベリスは一年のほとんどが夏さ」
フロル:「へぇ…お前、両親は?」
タダ:「…両親は、いない」
フロル:「ごめんよ、タダ、俺…」
タダ:「両親の記憶が全くないんだ、物心ついた時から村の長老に育てられたんだ」
フロル:「ふん…長老って、どんな人だ」
タダ:「僕の村は小さくて、貧しいのさ、だから、長老は村の神官だし、裁判官だし、医者だし、教師だし、僕にいろんなことを押し込んでくれた、直感力とかね。僕は宇宙パイロットになる、長老にそう誓って出てきたんだ。だから、テストに合格したら、パイロット養成コースへ進もうと思ってるんだ」
フロル:「宇宙船のパイロットか」
ガンガ:「どうもおかしいな」
タダ:「やっぱりずれてるんだ」
バセスカ:「どうした」
ガンガ:「船の軌道だ、黒い星の軌道からどんどん外れていっている」
バセスカ:「なに?」
タダ:「最初に船に来たとき、二度爆発が起こったろ?あれでずれたんだ」
四世:「くそ、いつになったらこの船のスクリーンはまともにうつるんだ?今日でもう四週間だぞ」
アマゾン:「チェ、勝手なことばかり言うもんだぜ、コンピューターの回路は回復したんからな」
ガンガ:「こっちの回路のセットが違ってんだかもしれない、もう一度点検してみよう」
タダ:「無理するなよ、ガンガ」
ガンガ:「はは、もうすっかり治ったさ、並な体じゃないからな」
赤鼻:「それにしても熱いな、まったく」
フロル:「ああ、ボロっちい船、スクリーンが馬鹿なうえに、クーラも利かねえときてるんだもんね」
トト:「スクリーンが復活した!」
「やったぜ」
「何だ、あれは?」
タダ:「青い太陽だ」
ガンガ:「今まで黒い星の影になっていたんだ」
ヌー:「不吉だ。私の星では、重なる星は凶事の前触れといわれている」
四世:「へ、そんなものは迷信さ」
ヌー:「あなたの星には季節はないのか?」
四世:「季節くらいはあるさ」
ヌー:「星の位置は季節を支配し、生命をも支配する。私の星ウィヌドーは太陽の周りを48年かかって回ります、私たちは春に生まれ、春に死にます、一生に一度も夏しかない。生と死、それは宿命です」
フロル:「へぇ、暑い暑い、暑いな…シャワーでも浴びなきゃやってらんねえや」
アマゾン:「水の出が悪いぜ」
フロル:「あ、そう、まったくよ、毎日毎日この暑さじゃやりきれねえよな」
アマゾン:「ああ」
フロル:「このまま太陽に向かっていったらどうなるんだこの船」
アマゾン:「さあな」
フロル:「キャアアア!!」
アマゾン:「どうした、フロル!どうした?…なんだよ!」
フロル:「何が水の出が悪いだよ!もう、溺れるかと思ってたまったく」
アマゾン:「Σ(゚д゚|||)!!」
フロル:「気まぐれのシャワーめ!よ、アマゾン悪いけど後で見ておいてくれよな」
アマゾン:「(;゚Д゚)!あ、いや、あ痛え!あ、あいつ!タダ、タダ!タダ!わあ、タダ!!」
バセスカ:「フロルが女性?本当かそれは?」
アマゾン:「本当だ、見ちまったんだよ、シャワー室で」
四世:「そうだったのか、道理で細くてなよなよしているはずだ」
アマゾン:「どうするんだよ、タダ!」
タダ:「ど、どうするって…」
四世:「どうします、王様?」
バセスカ:「もし本当にフロルが女性なら、今後はそれなりの扱いを考えねばならぬな」
フロル:「ああ、さっぱりした」
アマゾン:「きゃ!(。Д。)ノ!!」
タダ:「フロル!」
フロル:「よ、飯の支度ができてるか?…なんだよ、みんなどうかしたんのかよ」
四世:「フロル、君は女性なのか?」
フロル:「なに?!」
四世:「アマゾンが見たんだ。なぜ今まで隠してた?」
フロル:「バカ野郎!」
四世:「な、何をする!」
フロル:「どこに目をつけてやがる、頓痴気!女ってのはバストがあるもんだぞ!それでいやあタダのほうが胸囲があるじゃんか!俺のどこが女だと言ってんで!」
バセスカ:「では男か?テスト前にセックスチェック受けたはずだ、男性女性どっちらにチェックされた?」
フロル:「どっち、どっちでもええじゃんか、そんなの!」
ガンガ:「最終テストは遊びではないぞ、フロル」
四世:「女性なら女性と言うんだ、それとも君が11人目か?」
フロル:「なに?!あ、ちょっ、何しやがってこの!下ろせ馬鹿力!下ろせって言ってんだよ」
ヌー:「メニールがこんなことをしてはいけない」
フロル:「な、なんだよ、メニールって」
ヌー:「あなたはメニール、私の星の言葉で天使、まだ男でも女でもない」
アマゾン:「男でも女でもないって?」
タダ:「両性体」
四世:「両性体?」
タダ:「男女未分化の完全雌雄同体、そうだろ、フロル」
フロル:「ああ、このテストに受かったら、許可が下りるんだ、男になってもいいって!」
バセスカ:「つまりなにか、君は男になるためにテストを受けに来たんのか?」
フロル:「ああ、そうだよ」
タダ:「ヌー、君は最初から分かっていたんのかい?」
ヌー:「はい、私も同族種ですから」
タダ:「じゃ、君の星も…」
ヌー:「はい、私たちは男女未分化のまま育ちます、一定の年齢に達すると、ホルモンの分化によって男か女かに決まるのです」
フロル:「俺ん星じゃ、最初に生まれた子でねえと男になれねんだ、人口比の制約があって限られてるんだ。俺、末っ子でよ、もう二年すると体温が4度ほど上がる、そしたら、女性用のホルモンを与えられることになってるんだ。でも、コスモ・アカデミーに入学できりゃ、それは名誉だもんな、特別に男性用のホルモンもらえるんだ」
アマゾン:「そんなに男がいいのかね、俺の星じゃ、女は大切にされるぜ」
フロル:「俺ん星、一夫多妻制なんだ」
タダ:「一夫多妻って?」
フロル:「つまり、俺ん星の制度では、男が統治して、女が働くんだ。平均して、男一人に女が4・5人の割合ってとこかな、誰だって、女になると決まったら、大抵はすぐに結婚しちゃうね、俺の両親も、俺が女になったら、隣の領主のとこ嫁にやるつもりなんだ。その領主ってのが8人も奥さんがいてよ、そのうえ、18も年上なんだ、そりゃ、女はきれいだよ、外見はね、でも、それっきりだもん。姉上たちの結婚式よ、いくつも見てきたけど、でも、兄上の成人式が一番素敵だ、凛々しくてさ、うっとりしちゃった、やっぱり、生まれたからには男になって、あれくらい持て囃されてみたいや、ふふ」
四世:「くそ、なんだよこの暑さ」
石頭:「やはり徐々に惑星を離れて、青い太陽の方角へ迎えつつある」
ガンガ:「熱量のデータが出たぞ、機関部の熱量調整タンクが故障していて、吸収した太陽熱をたくわえらずに58%は船内に放出されているんだ」
タダ:「ここにあるラジエーターパネルも作動していない、外部の熱がどんどん船体に吸収されつづけているんだ」
四世:「じゃ、このまま、太陽にむかえば」
ガンガ:「そう、温度上がる一方だ」
アマゾン:「なんてこった!」
四世:「軌道がずれたのは、もしや11人目のせいじゃないでしょうね」
バセスカ:「分からん、どこまでがテストで、どこまでが11人目の仕業なのか」
フロル:「う、ん、くそ…うん」
タダ:「手伝うよ、フロル」
フロル:「余計なことをするんな、俺がきゃしゃでメニールだからってバカにすんなよ、男になったらお前なんかかなわないくらいの体格になってみせるからな」
アマゾン:「ははは、女になったら、かなりのべっぴんになるのにな、しかし恋人にしたら、大変だろうな、あの跳ねっ返りじゃん」
タダ:「そうだな…」
トト:「ここだけじゃないんです、温度が上がったせいか、キャビン区域のあちこちで勢いよく茂り始めているんです」
四世:「ジャングルになりそうだな」
タダ:(ツタが伸びる、温度が上がる、もっと伸びる、温度が…あ!)
アマゾン:「タダ!」
フロル:「タダ、どこ行くんだよ!」
タダ:「これだ!」
フロル:「何調べてるんだ?電導ヅタ…」
タダ:「電導ヅタ、セグル系の温帯産鉱物性植物、人口改良種は銅・ニクロムのかわりに配線に使用される、表皮は熱をよく吸収して、ツタの発育を促すが、一定熱量に達すると、自己防衛のため、表皮が白い結晶体を作り出して、断熱をおこなう。この結晶体には、発見者デルの名を取ったデル赤ハン病のウイルスがしばしば発生するんだ」
フロル:「デル赤ハン病?」
タダ:「予防薬は、弱性ウイルスの接種から採集したワクチン」
(数が限られています!マウスがもういません!)
タダ:「ワクチン…」
「マウスが、マウスがもういません!マウスが!」
「マウスがもういません!子どもだけでまだ500人以上いるんです」
「マウスから作るワクチンは200人分もありません!五歳以下の子供の分しか…」
「一週間以内に救助船が来なければ、この船は全滅です!デル赤ハン病は空気伝染ですからね」
「遺体をどこにおきますか?真空パックの数は1000もありません!」
「すぐ銃を密封するんだ、急げ!」
「ドクター、ワクチンをくれ!」
「俺の息子は八歳なんだ」
「ドクター!」
「私の家族はどうなるんだ!」
「いかん!マウスのケージに触っちゃいかん!」
タダ:「いたんだよ!」
フロル:「タダ、どうしたんだ?」
タダ:「いたんだよ!この船にいたんだよ!」
フロル:「タダ、しっかりしろ!タダ!タダ!タダ!」
(タダ、タダ、タダ…)
タダ:「母さん!」
(さあ、お飲みなさい、ぼうや、このワクチンを、さあ、ぼうや)
(お母さん…)
タダ:「忘れていたんだ、何もかも、失っていたんだ、四歳の時の記憶…あ!」
(この船のキャプテンですね、この子、この子をお願いします)
タダ:「長老!」
(母さん…母さん!)
タダ:「母さん!母さん!マウスがいないんだ、11人いるのに、11人いるのに!」
バセスカ:「今のタダの話が本当なら、我々は大変な危機に直面していることになる」
四世:「乗員乗客の九割が死亡していたなんて、えらい事件じゃないか、テラ系の君たちは知らなかったのか」
チャコ:「無理言うな、その頃俺たちは四歳やそこらだぜ」
アマゾン:「死の船だったんだな、このエスペランサ号は」
ガンガ:電導ヅタに関する実験結果が出た、あまりうれしい結果とはいかなかったが、電導ヅタを密封ケースに入れて加熱したら、40度で結晶が発生した、さらにデレ赤ハン病のウイルスもだ」
バセスカ:「40度か…」
ガンガ:「ちなみに、熱量データからの様相では、船内温度が40度になるのは、8日か9日の後だ」
四世:「なに?!じゃ俺たちは死ぬのか?」
アマゾン:「ふん!冗談じゃないぜ、まったく」
赤鼻:「そんな、死ぬなんて…」
トト:「体中に赤ハンができて…」
フロル:「薬は?」
ガンガ:「この病気にかかった死んだマウスからなら、予防ワクチンが採れるんだが」
四世:「マウスなんていないぞ、どうするんだ!」
石頭:「どうだ、スクランブルボタンを押すか?」
フロル:「冗談じゃねえ!不合格になれってんのか、最終テストのここまで来てよ」
赤鼻:「で、でも…」
フロル:「バカ野郎!俺は王様みたいに遊びでテストを受けてんじゃねえんだぞ」
バセスカ:「私は私の名誉をかけているんだ」
フロル:「こちとら一生の問題だ、男になるか女になるか」
アマゾン:「まだ考える時間はあるぜ」
チャコ:「そうだ、まだ押すのは早い」
「そうだ」
「そうだよ」
「絶対大丈夫だよ」
「はは…」
タダ:(長老…僕たちはどうしたらいいんですか、コスモ・アカデミーを受けると言われたあなたは、僕はこの船に乗ることを予知されていたんですか)
バセスカ:「こいつを直さなきゃならんのか」
ガンガ:「太陽熱の吸収を調整するラジエーター回路は完全にいかれている、かなり手間がかかりそうだな」
フロル:「ええ?複雑…」
タダ:「こっちもやられてる、修理した跡はあるな」
アマゾン:「前の連中も必死だったんだろうさ、急激に熱量が移動したせいでぶっ壊れてちまったらしいや、ワープの失敗が原因かもな」
ガンガ:「いきなりあの太陽に出くわしたかもしれんな」
バセスカ:「今日の食事当番は誰だ?」
トト:「ええ…(゚〇゚ ;)」
バセスカ:「スープの中にフォークが入っているぞ」
トト:「あ…あの、ぼ、僕、す、僕、ついうっかりして」
バセスカ:「貴様!私の胃にあなを開けるつもりか」
タダ:「よせよ、王様、この暑さだ、誰だって頭がぼっとなるさ」
バセスカ:「タンクの修理はいつ終わる」
ガンガ:「分からんな」
バセスカ:「分からん?病気の発生まで5日もないんだぞ」
ガンガ:「みんな精一杯やってるんだ」
バセスカ:「やり方をもっと工夫したらどうだ!…誰だ!」
フロル:「いい加減にしな!あんたは自分の国じゃ王様かもしんねえけどよ、ここじゃ実践的知識何一つ持たねえデクノボーじゃねえか?なんもできねえくせに、うだうだ吐かすんじゃねえ」
バセスカ:「デクノボーだと?」
フロル:「ああ、ヒステリーの役立たずさ!」
バセスカ:「き、貴様!!」
フロル:「やるか?この気障野郎!」
四世:「な、なんてことするんだ!」
フロル:「てめえもやるか!」
タダ:「止せ!フロル!」
フロル:「てめえ!やりやがったな!」
四世:「この野郎!」
ガンガ:「四世、落ち着け!」
石頭:「おい、みんな、ここは冷静に話し合おうではないか」
フロル:「うるせえ、石頭!」
アマゾン:「やっちまえ!てめえ!」
トト:「なに、僕の作った料理に何するんですか」
チャコ:「何だよ!大体貴様の味付けは俺には合わねえんだよ!」
フロル:「男は味くらいのことでがたがた言うんじゃねえ!」
バセスカ:「やめて貴様ら…!」
赤鼻:「ああ!まだ何も食べてないのに!」
ガンガ:「みんな、いい加減にしろ!お前たちもだ!」
フロル:「あれ?」
赤鼻:「どうなるんだ、俺たち…」
ヌー:「宿命、これもすべて宿命だ」
フロル:「くそ、頭がグラグラする」
ガンガ:「あ!」
タダ:「ガンガ!」
アマゾン:「危ない!」
赤鼻:「ひゃ!やれっちまう!」
アマゾン:「くそ…なんてこった!せっかく修理が終わりかかったんのによ!」
バセスカ:「何が起こった!船内温度が一気に3度も上がったぞ!」
タダ:「一気に3度も?」
バセスカ:「もう方法がない!諦めろうというのか?え?なぜワクチンがないんだ、ワクチンさえあれば、温度が何度になろうと心配はいらないんだ!」
ガンガ:「無理を言うな、マウスがいないし、日数もない」
ヌー:「宿命のままに従うしかない」
バセスカ:「貴様の哲学などを聞いている場合ではない、一体誰のせいでこうなったんだ、誰のせいだ!」
タダ:「止せよ、王様!」
バセスカ:「お前はいいさ、デル赤ハン病の予防処置を受けているんだからな、何が起こってもお前だけは助かるんだ、なぜ、なぜお前はこの船に乗り合わしたんだ!なぜ、この船には11人いるんだ!偶然だといったな、偶然だと?本当にそうか?どうなんだ!」
赤鼻:「動力レバーのところにいたのは、タダだ」
アマゾン:「そうだ、あそこにいたのはタダだ」
四世:「11人目だ、お前は11人目だ」
バセスカ:「何もかも貴様のせいだったんだ、貴様が」
赤鼻:「11人目だ」
チャコ:「11人目は、お前だったんだ」
タダ:「ち、違う、僕は」
バセスカ:「逃がすな!やつを殺せ!殺してやつの血液からワクチンを取り出すんだ」
石頭:「落ち着け!落ち着くんだ王様!タダの血液からは」
バセスカ:「放せ!」
石頭:「ワクチンなど採れんぞ」
バセスカ:「うるさい!逃がすな!」
ガンガ:「フロル、お前までか…」
フロル:「一番頭きてるのは俺だよ!あいつが動力レバーをたすのははっきり見たんだ!」
ガンガ:「フロル!」
アマゾン:「どうだ、やつを探せ!」
四世:「あ!あそこだ!」
アマゾン:「追え!」
バセスカ:「向こうへ回れ!挟み撃ちだ!」
四世:「アマゾン、そっちだ!」
フロル:「くそ」
四世:「そっちにはいないのか?」
チャコ:「いや、いない」
四世:「くそ、一体どこに隠れたんだ」
チャコ:「あ、いたぞ!上だ!」
アマゾン:「エレベーターだ!」
四世:「居住区へ逃げるつもりだぞ!ホールへ回れ!ホールへ!」
タダ:「赤鼻?!」
赤鼻:「…あ、ああ!!!」
タダ:「あああああああ!」
フロル:「やったのか?」
赤鼻:「こ、殺しちまった!」
トト:「あ!」
タダ:「(…暑い、眩しい…あれは!)あ…フロル」
フロル:「気がついたか、出ろよ、王様たちが尋問だってさ」
タダ:「俺、随分ねていたのか」
フロル:「三時間ほどかな、あれからまた2度上がっただぜ」
タダ:「ガンガは?」
フロル:「メディカルルームで眠ってろ、あのあと吐いたりして大変だったんだ」
タダ:「ところで、僕は打たれたじゃ…」
フロル:「赤鼻のやつ、銃のメモリを一番弱くしてたんだ」
タダ:「君は本当に僕が11人目だと思っているのか」
フロル:「じゃ、なんで逃げた?11人目じゃなきゃなぜ!…あ、暑いな、まったく、あ!…タダ、俺を殺せ!俺は卑怯者じゃねえ!お前に銃を奪われて、脅かされたなんて、思われたくない!殺せ!」
タダ:「フロル…それ、返すよ、僕がガンガのところに行く、みんなを呼んできてくれ」
ガンガ:「タダ…」
タダ:「ガンガ、熱はどうだ?体を見せてみろ」
ガンガ:「もう大丈夫だ」
タダ:「実験の時、感染したな」
ガンガ:「やっぱり赤ハン病なのか」
タダ:「ああ、しかし、これはもう…」
四世:「タダ、もう動くな」
バセスカ:「こっちへ来い」
ガンガ:「近寄るな、俺は発病したんだ」
バセスカ:「なに?」
四世:「お、俺たちにうつし気じゃ」
タダ:「ガンガは治りかけているんだ、そう、熱さえ下がれば、ガンガの体液からワクチンが採られる」
バセスカ:「ワクチン?」
ガンガ:「なるほど、俺の体がクロレラ用のサイボーグだってことが役に立ったんだ」
四世:「それは、ワクチンでみんなは助かるということか」
バセスカ:「そういうことだな」
「よかった」
「発病しないで済むんだ」
バセスカ:「待って!喜ぶのはまだ早い、ガンガの熱が下がってワクチンが採れるのと電導ヅタの結晶ができて発病するのと、どっちらが先か」
トト:「そうです、これは時間との戦いです」
チャコ:「そうだ、あと何時間かで、温度は40度をこえるぜ」
タダ:「だから、だから僕の言うことを聞いてくれ!船の温度を下げる方法があるんだ!」
バセスカ:「どういうことだ?それは?」
タダ:「先、エレベーターの中で気がついたんだ、この船はてっぺいを太陽に向けている。だから、エレベーター庫を使って、上層部の居住区を爆発させれば、軌道を変えられる!」
アマゾン:「そうか、この船の軌道がずれたのは最初の爆発だった、それをもう一度やってみるってことか」
バセスカ:「なるほど、危険かもしれんが、爆発によって機動を変えれば青い太陽から脱出できる、そうすれば当然船内の温度も下がるというわけだな」
タダ:「この船内には、まだたくさんの爆発物がセットされている、それを取り外して、利用するんだ!」
赤鼻:「あ、あの…もしも船が大きく壊れたりしたら…」
チャコ:「何言うんだ!これは絶対やってみる価値があるさ」
トト:「そうです、手をこまねくよりの方案でやりましょう(?)」
アマゾン:「そうだ」
チャコ:「賛成だね」
四世:「どうですか、やってみましょうか」
バセスカ:「よし、やることに決定しよう、だが作業が終わるまではタダを監禁する」
フロル:「なんでまた!」
ガンガ:「爆発物を探し出すのに、タダの直感力が必要ではないのか」
四世:「え?またまた直感力を当てにするのかい?」
ガンガ:「時間がないんだ。コンピューターで船内図の回路を一つ一つチェックしていたら、何時間かかるか分からんぞ」
トト:「そうですよ」
チャコ:「早く取り掛かんなきゃ」
バセスカ:「しかし、タダを信用するわけにはいかん」
ガンガ:「信用しろ、王様!」
バセスカ:「できん」
ガンガ:「信じろと言ったら信じろ!11人目はこの俺だ!」
バセスカ:「もしもお前が11人目だとしたら、なぜ、なぜだ!」
ガンガ:「おと、撃つなよ、俺は生きたワクチンだからな」
ガンガ:「悪気がなかったんだ、自分の体を実験するために忍び込んだだけだ」
アマゾン:「俺は信じないぜ、ガンガが11人目だなんて」
チャコ:「そうですよ」
トト:「いくらなんてもね」
四世:「だったらこいつはどうなんだ?」
タダ:「何言ってんだ!そっちが勝手に決めつけておいて」
フロル:「いい加減にしろ!11人目がどうしたよ!11人目がなんだってというんだ!そんなもん、始めからいないんだ!最初の自己紹介の時、タダが言ったとおりじゃんか!お互いへたなかばいっこなしだぜ、時間がないんだ!作業にかかろうぜみんな!」
アマゾン:「そうだそうだ、口の悪い割にはいいこと言うぜ」
チャコ:「よし、やろう」
トト:「やろう」
フロル:「さあ、タダ、爆発物の場所指示するんだ」
四世:「え…あの」
ガンガ:「みんなが待ってるぜ」
バセスカ:「お前には負けたよ」
チャコ:「これか」
アマゾン:「まったく、面倒くせいところに仕掛けてやがるぜ」
タダ:「あそこにもある!」
バセスカ:「全員シートにつけ」
アマゾン:「エレベーターを上げるぞ、20階だ」
バセスカ:「よし、エレベーターを止めろ」
アマゾン:「OK」
タダ:「隔壁を閉じるぞ」
石頭:「エレベーターを周りある居住区の隔壁も閉めないと危険だぞ」
タダ:「OK」
トト:「あ…温度が40度」
バセスカ:「秒読みを開始する」
バセスカ:「L25Bの隔壁が破れただぞ!」
タダ:「隔壁F-Bを閉鎖する!」
チャコ:「見ろ!太陽から遠ざかっていくぞ!」
タダ:「やった!」
フロル:「やっほー!」
「助かったんだ!」
バセスカ:「成功だ!」
四世:「やった!」
アマゾン:「大成功だぜ」
「船は順調に軌道を回復している」
ガンガ:「もうトラブルは起こらんさ」
バセスカ:「我々は幸運だったかもしれん」
チャコ:「取立ての果物だよ」
「うわ…」
フロル:「うまそう!」
タダ:「どうしたんだ、フロル?」
フロル:「な、何でもない」
タダ:「ちょっと!その手を見せてみろ!」
フロル:「なんでもないったら」
タダ:「いいから見せろ!」
フロル:「やめろ!何するんだよ!」
タダ:「フロル、これは…」
タダ:「間違いなく、デル赤ハン病の症状だ。ワクチンがフロルにはきかなかったらしんだ」
フロル:「大丈夫だよ、あと八日くらいなんとかなるさ、ガンガだって、すぐ治ったじゃんか」
ガンガ:「俺の場合とは違う」
タダ:「八日経たないうちに死んじゃったらどうするんだ、フロル」
フロル:「俺が、俺が死ぬわけねえだろう!」
トト:「ボタンを押しましょう」
フロル:「よ、止せよトト、冗談だよな、な、な、みんな、今のは、トトの冗談だよな」
チャコ:「ここまできて、残念だけど、フロルの命にはかえられない」
アマゾン:「そうさ、受験のチャンスはまたやってくるからな」
四世:「国に帰るのは三年遅れるだけさ」
赤鼻:「やるだけのことはやったんだし」
フロル:「くそ…バカ野郎!どうしたんだお前ら、合格したくねえのかよ!」
ガンガ:「合格する前に死ぬぞ、フロル」
フロル:「死んだほうがましだ!女になるくらいなら、今まで45日間何のためにみんなで頑張ってきたんだ、何のためだったんだ!え?タダ!アマゾン!ガンガ!合格のためじゃんか!な、そうだろ、王様!」
バセスカ:「絶対多数だ、フロル。スクランブルボタンを押す」
タダ:「フロル、熱があるんじゃないか」
フロル:「ないよ、俺、最後のチャンスだったんだ、どうしても、男になりたかった」
タダ:「フロル、この広い宇宙を見てごらんよ、生きているのは僕たちだけじゃない、あそこに輝いている無数の星たち、それぞれが命の息吹を確かめ合っている、そんなふうに見えるじゃないか、フロル」
フロル:「うん、見える、とても素敵だ」
タダ:「フロル、僕の星に来ないか、僕と結婚しよう」
フロル:「だって、俺が変化して女になるの、ずっと先だぜ」
タダ:「だから待つよ」
フロル:「俺、美人になるかどうか、分からないぜ」
タダ:「美人になる。あ、どうした?」
フロル:「やっぱり、熱が…あるみたい」
「お、救助隊が来たぞ」
「思ったより早い」
「病人はどこだ」
「ここです」
「全員直ちに救助隊に連れ」(?)
四世:「一人多いって言われるだろうな」
アマゾン:「いいじゃないか、どうせ、あ、9人しかいない!」
タダ:「え?」
赤鼻:「一人少ない!」
バセスカ:「誰か来たんだ」
「全員着席。グレン教官、どうぞ」
「ああ!」
「え…」
「石頭?!」
石頭:「私がグレン教官、11人目だ。今回の最終テストは、君たちの共助性と適応性を試してみることが目的だった。宇宙には常に、思いがけない状況がある。不条理な11人目が存在するようなものだ。私の任務は君たちのグループに紛れ込み、トラブルを起こして、できるだけ早くスクランブルボタンを押させること、および、君たちの生命を守ることの二つだった」
バセスカ:「ではどうしてタダの直感力で見抜けなかったのですか、いし、グレン教官」
石頭:「私のテレパシーのほうが勝っていたのだ」
タダ:「すると」
石頭:「ガンガの事件の時、スイッチを入れるようテレパシーで命じたのは私だった、思いがけない結果になって本当に済まなかった、爆発による軌道のずれと、電導ヅタによる病気の発生は予定のプログラムにはなかった、大学らのミスだ。にもかかわらず、君たちは45日間の共同生活を送った、このテストに参加したグループの中で、君たちの成績はベストワンだ。何しろ、35日間以上耐えたのは、70グループのうち6グループしかなかった、君たち全員、合格だ!」
四世:「合格?」
ガンガ:「合格だって?」
石頭:「コスモ・アカデミーを代表して、心から君たちの合格を祝福する。おめでとう!」
「おめでとう!」
チャコ:「はははは!やっほー!」
バセスカ:「合格だ!」
四世:「王様!」
ガンガ:「タダ!よかったな」
タダ:「ありがとう、ガンガ!」
チャコ:「タダ!」
赤鼻:「タダ!」
トト:「一緒に勉強できますね」
タダ:「うん、トト!」
バセスカ:「タダ、いろいろすまなかった」
タダ:「王様…」
バセスカ:「国へ戻ったら二度と会えないんが、君のことは決して忘れない」
タダ:「お元気で」
バセスカ:「うん」
タダ:「四世」
四世:「よかったな、直感力、大したやつだったぜお前は」
タダ:「こいつ!」
アマゾン:「タダ、これからも仲良くやろうぜ」
タダ:「ありがとう」
アマゾン:「入学式でまた会えるな」
タダ:「うん」
アマゾン:「フロルのやつ、晴れて男になれるんだよな」
タダ:「あ、そうだな、うれしいだろうな…」
石頭:「タダ、おめでとう」
タダ:「ありがとうございます、グレン教官」
石頭:「君をこのグループに入れたのは、君の長老からの知らせで、君がエスペランサ号の生存者だと分かったからなんだ」
タダ:「長老が?」
石頭:「長老はコスモ・アカデミーの先輩でもある、君が見事にその期待に応えることができた、胸を張って、長老に合格を報告したまえ」
タダ:「はい!」
フロル:「タダ…」
タダ:「や」
フロル:「や」
タダ:「どう?」
フロル:「うん、まだ信じらんねえな、合格してたなんて、俺、母上や姉上にも鼻が高いや」
タダ:「本当によかった、本当に…」
フロル:「俺…お前がそう言うんなら、なってもいいや、女に…」
タダ:「あ?あ…」
トト・ニ
卒業後、植物分布に関する新説で注目を浴びる
チャコ・カカ
小規模ながら、星間貿易会社を設立。
ドルフ・タスタ
星間裁判所の判事補に任命される。
ヴィドメニール・ヌーム
詩集「メニールの夏」を出版、ベストセラーになる。
ガンガス・ガグトス
母星で新しい風土病対策に取り組む。
ソルダム四世ドリカス
母星で行政官として多忙な日々を送る。
アマゾン・カーナイス
作曲家として活躍。
マヤ王バセスカ
母星の資源開発計画を推進、四世の妹と結婚する。
グレン・グロフ
宇宙航行訓練中の事故で生徒を救助するため殉職。
タダトス・レーン フロルベリチェリ・フロル
二人はパイロット養成コースを卒業後結婚。
(終わり)
ワープ航法の発見により
飛躍的な宇宙進出を実現し
数世紀のあいだに
多くの惑星国家を形成した
その後、サバ系・セグル系など
さまざまな異星人と遭遇し
数世紀にわたる
戦争と和解をくりかえしたのち
すべての惑星国家は星間連盟を結んで
宇宙共存の時代に入った
「コスモ・アカデミー」
120年前、新しい時代をになう
優秀な人材を育成するため
星間連盟によって創設された
宇宙学のあらゆる研究ジャンルを持つ
宇宙最高の教育機関である
その大学の卒業生は
すべての社会でエリートとしての地位を約束される
テラ系・サバ系・セグル系
その他の辺境星から
膨大な数の入学希望者がここに集まっていた
「完全防音のカプセルの中で、聞こえるのは、回答を打ち出す自分のキーの音だけ。孤独な頭脳との戦いが、何時間も続いている。」
「三年ごとに行われる入学試験、受験資格に制限なし、第一次予備試験合格率0.1%、第二次予備試験合格率3.8%、最終試験に臨んだ者七千名、僕もその一人」
「あと少しだ、この難関をクリアすれば合格だ」
「受験番号をチェックする」*2
(OK BY73025)
「よろしい、カプセルを出て、ドアB26に行け」
「よかった」
「受験票チェック」*2
「チェックは…あった」
「受験票を受け取って、ロッカー46へ行け」
「次のテストは」
「宇宙遊泳用のスーツ及びヘルメットを着用せよ」
「一体何が始まるんだ…」
「これから最終テストのポイントに向かう、最終テストに残ったのは700名、このシャトルには君たち100名が乗っている。テストは10人一組で行われる、テストポイントごとに10人のグループをランダムに受験番号で呼び出す。では諸君、テストの成果を期待している」
タダ:(最終テスト…一体何をやるんだろう、どんなテストでもクリアして、きっと合格してみせると)
長老:「自信を持って、タダ、お前なら大丈夫。お前は頭もいいし性格もしっかりしておる。それに、小さい頃からの優れた直感力もあるしな」
「第一テストポイント」*3
長老:「宇宙船のパイロットになりたいというお前の夢は分かっておった、しかし、お前がコスモ・アカデミーを受けたいと言った時は、正直驚いたものだ」
「第二テストポイント」*3
長老:「コスモ・アカデミーへの道は長い、試験は三年に一度しかない、しかし、希望への一歩だ。夢は大きい方がいい」
タダ:「長老…」
「第三テストポイント」「受験番号BY73025」*2
タダ:「ぼ、僕だ」
「揃ったか、では、受験票をここに呈出せよ。よし、君たち十名は第三グループ、君たちのテストポイントはアレだ。なにをやるかは行けば分かる」
「入口はどこだ」「あの凹みか」「ロックは」「これじゃないかな」
「早く入れ!」「押すなよ」
「最終テストが実技なんて聞いてなかった」「暗いな」
「古臭い宇宙船だ、漂流しているのかな」
「10人いるか?ロックを閉めるぞ」「よっし!閉めてくれ」
「こんなところで何がやれるんだい」
「安全確認のランプだ」「そろそろヘルメットを取ってもいいところだろう」
「おい!一人多いだ!」
「そんな」「多い?」「一人多い」「本当だ!一人多い!」
「一人多い」「誰が」「どうして」「誰なんだ」
「一グループ10人のはずだぞ」
タダ:「11人いる…一体どういうことなんだ、これは」
「なぜだ、なぜ一人多いんだ」
「シャトルを出る時は確かに10人だったぞ」
「どうなってんだ?いつ増えたんだ」
「誰か最初から人数を数えていた者いなかったのか」
「受験カードは10枚だった」
「コンピューターミスかな」
「まさか、最終テストなんだぜ」
「じゃどうしてた?誰が多いんだ、君か?」
「僕は受験生だ」
「君か?」「オ、オレだって」「俺もそうさ」
「君か?11人目は」
タダ:「ち、違うよ。でも、みんなも顔を見せたらどうだろう、とにかく落ち着かないと」
ガンガ:「そうだな、その通りだ。我々は孤立している、慌ててみても始まらんぞ」
バセスカ:「確かに、そうだな」
バセスカ:「君も受験生か?」
ヌー:「そうです」
アマゾン:「女だ?」
バセスカ:「君が11人目だな?」
タダ:「でも、女性もたくさん受験してるんだ、成績が受ければ女の子だって…」
フロル:「なに?俺のどこが女に見えるって言うんだよ!」
タダ:「だって――」
フロル:「二度と俺のこと女なんて言ってみろう?ただじゃおかねえ。女なんて大嫌いだ!」
フロル:「痛えじゃ、この石頭!」
バセスカ:「コックピットはどこだ?おい!」
タダ:「コックピットはこっちだ!」
フロル:「あ、待ってよ!」
四世:「どうしてんだ?!」
アマゾン:「重力場調整装置が故障したんだ!」
バセスカ:「コックピットへ急げ!」
ガンガ:「開閉ボタンはどこだ」
タダ:「そこにスイッチが…」
ガンガ:「ええ?あ、これか」
バセスカ:「メインコンピューターを作動させろ」
タダ:「パワーボタンはそっちだ」
ガンガ:「分かった」
タダ:「船内図を出そう」(?)
ガンガ:「おい、重力場の方を何とかしてくれ」
アマゾン:「了解」
ガンガ:「君、動力の方を調整してくれ」
四世:「分かった、なんとかなるだろ」
ガンガ:「では今すぐ爆発場所を調べてみる」
タダ:「頼むわ」
バセスカ:「これは何?」
タダ:「爆発物がセットされているらしい、回路を探ってみよう」
ガンガ:「先の爆発は上部中央二箇所、既に非常用シャッターがおりている」
「わかった」「OK」
アマゾン:「重力場調整装置の回路は一箇所ショートしてるぜ」
ガンガ:「他の回路からパワーオン出来ないか」
アマゾン:「やってみる…これか?重力場調整装置は順調だ」
ガンガ:「お手柔らかに頼むぜ」
アマゾン:「すまん」
四世:「くそ、どうなってんだ、これか?ああ!」
アマゾン:「電圧上げすぎたんだ!ドジ!」
四世:「何だと?!」
アマゾン:「ドジだからドジだって言ってんだこのドジ!」
フロル:「こりゃ危ねえな、次の爆発まで20秒しかないぞ」
バセスカ:「20秒?おい、爆発物の回路を早くカットしろ」
タダ:「今探してる!どこだ…このラインのボタンは、このラインは…」
フロル:「あと10秒だぞ、9、8、7、6…」
バセスカ:「おい、まだか」
タダ:「D回路だ!D回路をカットしろ!」
フロル:「みんな、助かったみてえだぞ」
トト:「ああ、よかった」
赤鼻:「ヒヤヒヤしたぜ」
「第三グループの受験生諸君、これから最終テストの課題を伝える。君たち10名は、この船にクルーとして、本日より53日間とどまること」
アマゾン:「53日間?」
赤鼻:「そんなに長く…」
「その間、君たち自身で解決不可能な非常事態が発生した場合、赤い色のボックスにセットされたスクランブルボタンを押せば、テストは中止され、救援を求めることが出来る。その他のコンタクトは一切なし」
チャコ:「このボタンだ」
「53日間の共同生活を達成した場合、君たち10名全員が合格となる、10名のうち一人でも脱落した場合、全員が不合格となる。では健闘を祈る、グッドラック」
石頭:「10名のうち一人でも脱落した場合、10名全員が不合格となる…」
四世:「11人いたらどうなるんだ?」
赤鼻:「始めから非常事態だ」
四世:「なぜ一人多いんだ?!どうするんだ、ん?みんなどうなるんだ」
ガンガ:「では今すぐこいつを押すがいい、そうすればテスト中止、全員不合格、解決ははやいぞ」
ヌー:「誰が11人目かを探すより、他にやることはたくさんあると思う、私たちには」
アマゾン:「そうだよ、俺たちは53日間頑張って合格することが第一だぜ」
バセスカ:「お前たちの言う通りだ、我々は孤立している。11人目だって死にたいわけじゃあるまい、まず全員自己紹介といこう」
四世:「自己紹介?」
バセスカ:「名前と受験番号を」
四世:「受験番号なんて信用できるもんか」
タダ:「僕が手を触れてみるよ」
フロル:「ええ?お前テレパスか?」
タダ:「いや、ただの直感力だけど、言ってることが本当か嘘かくらいはすぐ分かる」
バセスカ:「いいだろう、お前の直感力は先から素晴らしい働きをしている」
アマゾン:「ヒュウ~解決解決、一人づつ握手すりゃすぐ11人目が分かるってわけだ」
バセスカ:「私からいこう、私はサバ系アリトスカ・レのマヤ王ばせスカ、受験番号AQ00820」
四世:「アリとスカ・レ?隣の星だ!」
バセスカ:「では君は?」
四世:「そうです、サバ系アリトスカ・ラのソルダム四世ドリカス。確かにあなたはマヤ王だ、つい最近頃王位を継承されたと聞きましたが、大学へ行かれるのですか」
バセスカ:「いや、私は力試しの受験だ、合格しても国へ帰る、統治しなければならぬでね」
アマゾン:「へえ?王様に貴族の四世ね、こちとらプロレタリアートのテラ系シュシュから来たアマゾン・カナイスとクラ」
四世:「テラがサバより歴史が浅いからといってそう僻むもんじゃない」
アマゾン:「なにを?!」
チャコ:「やめなさいよ!、それどころじゃないでしょうに。僕もテラ系、クエスから来た、チャコ・カカ」
赤鼻:「僕もテラです、テラ系ペロマのドルフヌスタ、みんな赤っ鼻と呼ぶけど」
トト:「サバ系のミスから、トト・ニ」
フロル:「へぇ…俺の手よりでけえな」
タダ:「な、何だよ」
四世:「君もサバ系だろう?サゼあたりの名門かな?大体サバ系には美形が多いからな」
フロル:「サバもテラも知んねえ、俺ん星はヴェネ、どの星系にも属しちゃいねえんだよ」
タダ:「き、君、名前は?」
フロル:「フロル、フロルベリチェリ、フロルってんだ」
四世:「ひどい言葉だ」
バセスカ:「よほど辺境の星から来たんだろう」
四世:「星間標準語習わなかったとしか思いませんね」
フロル:「うるせぇ!役者のオーディションじゃあるめぇし、セリフでパスすん訳じゃねぇだろ!先から聞いてりゃサバだのダラだのそんなもん食えっかい?早く続けるんな(?)」
ヌー:「私もどの星系にも属さない辺境の星ウィヌドーから初の受験生、ヴィドメニール・ヌーム。ヌーって呼んで欲しい」
アマゾン:「誰が11人目かいたかい?」
タダ:「いや、みんな受験生に間違いない」
ガンガ:「サバ系トレドレーガ、ガニガス・ガグトス、通称ガンガ、受験番号PJ42291」
アマゾン:「あと一人だ」
石頭:「サバ系サゼから、アインツバイ」
タダ:「違う」
フロル:「石頭!おめえか?!11人目だな」
石頭:「待って、この人の直感力を試しただけなんだ。失礼した、もう一度頼む。僕はグレン・グロフ、セグル系灰白色星から来た」
アマゾン:「誰が11人目だ?」
タダ:「誰もいない」
四世:「誰もいない?」
アマゾン:「そんな馬鹿な…」
タダ:「本当に誰も嘘をついていないんだ、でもどうして」
バセスカ:「君の名前は?」
タダ:「僕はタダ、タダトス・レーン、受験番号BY73025、テラ系シベリースから来たんだ」
バセスカ:「君の証明は誰がする?それとも君が11人目か」
タダ:「そんな、僕じゃない」
バセスカ:「では誰だ?」
タダ:「分からない、僕の直感ではみんな受験生だ」
バセスカ:「君の直感力とやらお当てにしたのが間違いだった」
アマゾン:「ああ、これで振り出しに戻ったか」
四世:「期待させといて」
バセスカ:「静かに。とにかく船内を見回ることにしよう、必ず二人以上で行動しろ、怪しい素振りの奴がいたらすぐに報告すること」
フロル:「何だよあいつ、勝手にキャプテンづらしやがって」
ガンガ:「あの王様、なかなかの切れ者じゃないか、キャプテンにはもっとも適任だと思うがね」
タダ:(なぜだ…直感力がどうかしちまったのか)
フロル:「しょげんなよおめえ、テストは始まったばかりだからな」
バセスカ:「クルーのキャビンらしいな」
アマゾン:「すごいだ、なんブロックもあるぜ」
フロル:「痛え…」
タダ:「なんだい?」
フロル:「べつに、行こうぜ」
バセスカ:「ロビーのようだな」
アマゾン:「おお、カウンターバーなんかあるぜ」
フロル:「ん、へぇ?いいもんがあるぜ、結構上等なのばかりじゃん、飲むか?」
タダ:「いや」
フロル:「お、おい待ってよ」
タダ:「前に見たような気がする」
四世:「ええ?!」
チャコ:「そりゃそうさ、有名だもの。テラの遠い祖先のロモという彫刻家が制作した宇宙の守護神像っていうんだ、テラの船にはよくレプリカが飾ったあるよ」
バセスカ:「するとこの船はテラのものか」
四世:「弓には何もつがえてないぜ」
チャコ:「それはいつでも論議のまとさ、ある者は平和を伝えると言うし、ある者は愛、ある者は青春、勇気とか希望とか」
フロル:「俺だったら力だな」
ヌー:「宿命(さだめ)、という答えもある」
アマゾン:「下に何か書いてあるぜ、文字みたいだな、なんて読むんだ」
チャコ:「かすれてて全部は分からないけど、エスペランサの航海の無事を願って、エスペランサ、この船の名前だね」
タダ:「へぇ?」
バセスカ:「エスペランサ号か」
タダ:「エスペランサ号…なんだろ、この直感に引っかかるものは…初めて聞く名前なのに」
トト:「あ、向こうにエレベーターがある」
フロル:「おっ」
タダ:「何してるんだよ!」
フロル:「おめえ、テラ系では標準体型か」
タダ:「そうだよ」
フロル:「俺と同じ身長なのに、どうして肩幅が広いんだ?」
タダ:「君が細いんだろ」
フロル:「腕もお前のほうが長いし」
タダ:「君が短いんだろ」
フロル:「ほら、お前のほうが大きいし」
タダ:「早く行こうぜ」
フロル:「おっ、おい待ってよ、おい!」
四世:「どうやって動かすんだ」
バセスカ:「どっかにスイッチが入れば(?)」
タダ:「足をおく、青い線があるはずだけど」
四世:「あ、本当だ」
アマゾン:「上か下か、どっち行くんだ?」
バセスカ:「下だ」
フロル:「下には何があるのかな」
タダ:「機関部だ。上の方は居住区じゃないかな」
バセスカ:「よく分かるな」
タダ:「え、いや、感だよ」
赤鼻:「ここも暗いな」
ガンガ:「全然中が見えないぜ」
フロル:「本当に黒いな、スイッチどこだ?」
タダ:「右の方にあるはずだが」
フロル:「うわ!き、気持ち悪い…何だよこれは」
タダ:「気味が悪い」
トト:「これは電導ヅタですね」
タダ:「電導ヅタ?」
トト:「電気を通す植物です。メーカーの配線に使われていたのが、野生化したんですね」
赤鼻:「何だか、嫌な気分になってきた」
ガンガ:「元はセグル系で発見された鉱物性の植物だ、フロル、安心しろ、君をとって食ったりやせんから」
フロル:「誰がとって食うなんて言ったよ!ちょっとびっくりしただけじゃんか」
フロル:「でっけえ倉庫だな」
タダ:「生活物資の貯蔵庫になってるんだ」
アマゾン:「へぇ?何でも揃ってるじゃないの、こっちは?へぃ、ガラクタばっか」
フロル:「ふん…」
タダ:「重いな、何だろう」
フロル:「手伝おうか」
タダ:「うん、大丈夫だ。ん?痛え!何するんだよ!」
フロル:「おめえの皮膚のほうがかたそうだなあと思ってさ、ごめんごめん」
タダ:「本当にもう、どういう性格してるんだろうな」
チャコ:「えぇ、ぎっしりだ」
赤鼻:「三箱もある」
フロル:「タダが見つけたんだ」
バセスカ:「お前がか?」
アマゾン:「強度調整式のショックガンだ、メモリを最強にすれば人も殺せる」
四世:「こいつが役に立つぞ」
ガンガ:「こんなものがなんの役に立つというんだ?」
四世:「役に立つさガンが、考えてみろ!俺たちは危険の真っ只中にいるんだ。11人目が誰だか分からない以上、身を守る必要がある」
ガンガ:「俺は反対だ、武器は危険をエスカレートさせるだけだ」
トト:「僕たち今、お互いに疑いあっているから」
ヌー:「殺し合いですか」
バセスカ:「よし、多数決で決めよう、銃の所有に賛成の者は」
フロル:「おめえは賛成しねえの?」
バセスカ:「よし、反対の者は」
フロル:「ふん」
バセスカ:「6対5だ、銃を片付けてキャビンのロッカーへ運び込め。お前が反対とは意外だったな」
フロル:「おめえは腰抜けだよ!」
タダ:「フロル、君は銃が使えるのか?」
フロル:「あたりめえよ!俺スゴ腕だぜ!バキュンー!*5」
タダ:「フロル…君は」
フロル:「何だよ?なんでそうジロジロ見るんだよ」
タダ:「いや、どうも僕の直感力も…おかしいや」
フロル:「変な奴だな」
アマゾン:「持ち上げるぞ」
フロル:「よし、んん、うん!」
アマゾン:「どうした」
タダ:「代わろう」
フロル:「余計なことするんな、あ!…ん!あたまきた!くそ」
バセスカ:君と私が勿論だが、トト、 チャコ、赤鼻の三人はまず白だ。フロルのような単純なやつも、11人目じゃありえまい。残りの中で、タダはどう思う、四世?」
四世:「あのテラの直感力のことですか?」
バセスカ:「そう」
四世:「銃を見つけたり、なぜああもこの船のことに詳しいのか」
バセスカ:「あの直感力は曲者だな」
フロル:「ああ、長え一日だったな」
タダ:「いろいろあったからな、あと52日だ」
フロル:「俺このテストに絶対合格しなきゃならんね」
アマゾン:「俺だってそうさ、俺が合格したら宇宙工学コースに入るつもりなんだ」
フロル:「うわ、すげえ」
タダ:「すごい傷だな、アマゾン、どうしたんだ」
アマゾン:「俺の星は狩猟の星だ、俺も生まれたばかりの小さい時から、獣の狩りばかりやってたからね。そのうちエンジニアリングには面白くなって、だからちょっとばかしお勉強なんかしてみようかってわけ」
タダ:「そうか」
フロル:「俺は、合格できりゃそれでいいんだ」
アマゾン:「王様と同じか?力試しってとこか」
フロル:「あんなかっこつけ野郎と一緒にするんじゃねえよ」
アマゾン:「悪かった」
フロル:「いい音だな」
アマゾン:「この部屋にいたクルーが忘れていたらしい」
タダ:「テラ系の言葉じゃギターっていうんだ、大昔からある伝統的な楽器さ」
フロル:「おめえずっと男やってきたわけ?」
タダ:「ええ、どういう意味?」
フロル:「何でもない。でも、この船何で漂流船になっちまったのかな」
アマゾン:「機関部の故障だろ」
フロル:「乗客はどうしたんだろう」
アマゾン:「そりゃ救助されただろうさ」
フロル:「全員死んじまった、ってなこともあるぜ、事によると」
タダ:「全員…死んでしまった」
アマゾン:「ありうるな」
フロル:「そうだ!11人目はそれだ、死んだ乗客の…幽霊だ!」
タダ:「死んだ、乗客…」
バセスカ:「今日で4日目だ。このエスペランサ号は、長期旅行用の客船か移民船だったようだな、上層部は約600世帯の居住区になっており、倉庫には二年から三年分の食料や生活必需品、そのほか、トトたちが見つけた人工菜園や図書室もある。コンピューターの不調のため、詳しい状況は分からないが、レーダーの計測によると、駆動系の壊れているエスペランサ号は、この黒い星の周囲を衛星のように回っている。星の直径は約4000キロ、大気はなし、船の軌道周期は53日間だ」
フロル:「そうか、テストの日数が53日ってのはそれだ、つまり、この船が星を無事に一周すりゃいいわけだ」
バセスカ:「そう、無事にな」
ガンガ:「動いてないコンピューターが結構あるな」
アマゾン:「何箇所もショートしている、配線を取り出して、繋ぎ直さなくちゃならないな、ここは俺がやるから、あっちの回路を見てくれないか」
ガンガ:「分かった」
石頭:「僕も手伝おう」
アマゾン:「あ、頼むぜ石頭、これが修理のマニアルだ」
石頭:「結構切れてるな」
ガンガ:「タダ、E回路の電源を切ってくれ」
タダ:「OK。爆発物はまだこんなに残っている、居住区に50箇所あるな、スイッチ一つでまた爆発するのか…」
声:「タダ、スイッチを入れてくれ、E回路のスイッチを入れるんだ」
ガンガ:「うああああ!」
アマゾン:「ガ、ガンガ!」
フロル:「どうした!ガンガ!ガンガ、おいしっかりしろ!何ボケっとしてんだ!担架だ急げ!」
バセスカ:「どうした!」
四世:「何あったんだ!」
バセスカ:「何をふぬけている!お前のミスだぞ!」
タダ:「担架はこっちだ!」
バセスカ:「タダ!」
タダ:「ガンガを運び出してくれ!」
トト:「ガンガ!」
タダ:「こっちだ!ガンガをオペルームに運び込むんだ!フロル、オペルームのスイッチをオンにしてくれ!左の部屋だ!」
フロル:「分かった!」
四世:「おい、オペだってどうする気だ?誰がやるんだ?出来るやつがいるのか、え?」
タダ:「僕がやる」
四世:「なに?」
石頭:「君は解剖学の知識か実体験があるのか?」
タダ:「長老が医者でその助手をやっていたんだ、なんとかやれる」
四世:「バカな、事故を起こしたのはお前だぞ、ガンガを殺さないという保証がどこにある?今一人でも死んでみよう、全員不合格になるんだぞ」
バセスカ:「やらせてみろ」
四世:「え?」
バセスカ:「もしガンガが死んだら、自分が11名だということを証明することになる、やってみろ」
タダ:「誰か助手を務めてくれないか」
フロル:「俺がやる!俺ちったあ知識があるんだ」
タダ:「じゃ、頼むぞフロル!」
石頭:「僕も手伝おう、知識は対しないので指示を頼む」
タダ:「ほかのみんなは向こうの部屋へ移動してくれ」
タダ:「ショートした時の配線が二本、体の中に入り込んでる、これを取り出すんだ」
フロル:「心電図は正常だ、血液型は分ねえな」
タダ:「なんとかやる」
タダ:「メス。緑色の血だ、気分悪いのか」
フロル:「俺こういうの初めてたんだ」
タダ:「さき知識があるって」
フロル:「俺学校教材のビデオで見たことがあるだけなんだ、大丈夫さ、しっかり助手は務めるって」
タダ:「頼むぞ」
フロル:「任せとけ」
石頭:「タダ、患部はかなり深いぞ、内蔵を傷つけないように気をつけろよ」
タダ:「分かった。あ…ありがとう。(緑色の筋、緑色のリンパ…深いな、しかしすごい筋だ、発達している…あったぞ)フロル、ピンセット!」
石頭:「細いコードがついてる、注意して取り出せ」
タダ:「分かった」
フロル:「よかったな、助かって」
タダ:「ああ、丈夫な男だ」
バセスカ:「これからお前を尋問する。」
フロル:「何だよ、タダはちゃんとガンガを助けたじゃんか」
バセスカ:「タダ、お前はこの船に乗ったことがあるな」
タダ:「こんな船に乗ったのは初めてだ」
バセスカ:「ではなぜコックピットの位置が分かった?居住区が上で機関部が下だと、ドアの開け方スイッチの位置担架のあり場所、なぜそんなにも詳しい!単なる感だけで説明がつくか」
四世:「どうした、答えられないのか?え、直感力?」
バセスカ:「弁明ができないのなら、この場で決を採り、不信票が多ければ、疑いが晴れるまで一室に閉じこもってもらう」
フロル:「そりゃねえだろ王様、いくらなんでも監禁だなんて」
バセスカ:「我々の合格のためだ」
チャコ:「そうさ、誰だって11人目のために不合格になるのは真っ平のはずさ」
赤鼻:「それに死にたくもない」
アマゾン:「まあ、一人多いってことは事実だけどな」
バセスカ:「では、タダの監禁に賛成の者は…5人だ。決まったな、5対4で、タダ、お前を閉じ込めることにする」
ガンガ:「待って!」
タダ:「ガンガ?」
フロル:「ガンガ!」
ガンガ:「あの事故はタダだけのせいじゃない、あの時俺はうっかり手元の安全ロックを切るのを忘れていたんだ、それさえ切っていれば、たとえ電源が入っても事故に遭うこともなかった、だから俺のミスでもあるんだ、納得してくれるな、王様」
フロル:「本当驚いたな、傷口は縫い合わせたばかりだっていうのに」
タダ:「ありがとう、ガンガ。君は僕を疑ってないのか」
ガンガ:「11人目がそうバカをさらすとは思えないんでね」
フロル:「そうだよな、こいつドジばかりやらかしてよ、手に負えねえよ、本当」
タダ:「フロル、ガンガの傷口を見るから、新しいガーゼを出してくれないか」
フロル:「OK」
ガンガ:「タダ、お前が手術をしてくれたのか」
タダ:「う、うん、ヒヤヒヤだったよ、血液型が分からなくて」
ガンガ:「俺の体、全身緑色だったろ」
タダ:「う、うん」
ガンガ:「俺の星はサバ系の中心から、えらく離れたところにあったな、ひどく短命な種族なんだ。星全体を覆っている風土病からのがれることができず、大抵30前で死んでいく、俺はトレドレーガ型緑色クロレラの栽培方式をとりえた一種のサイボーグなんだよ」
タダ:「サイボーグ?」
ガンガ:「まだ実験段階だからな、九歳の時に培養を受けた、このまま生き続けて、染色体異常が認められなければ成功だ。ほかのトレドレーガの人々にも培養できる。もちろん費用がかかるから、最初は数が限られるだな…どうした」
タダ:「いや、大丈夫だ、傷口は繋がっているよ」
タダ:(何だ、この恐ろしく危険な感じは…数が限られる…限られる*3…)
ガンガ:(だから俺は、ぜひともコスモ・アカデミーに入学したい、入学したら宇宙生命医学の研究コースに進みたいんだ。風土病が克服されれば、みんな長く生きられて、より多く働いて、幸福になれる)
タダ:(なぜだろ…なぜ、こんなところに来たんだろ。この船の何かが直感を刺激する)
声:(タダ、スイッチを入れてくれ、E回路のスイッチを入れるんだ。タダ、E回路のスイッチを入れるんだ)
タダ:(あの時、耳元に聞こえた声は一体…テレパス!そうだ、感が狂ったわけ、声が聞こえたわけ、僕の直感力を上回るテレパスがあの10人の中にいるんだ。王様、四世、アマゾン、誰だ…石頭、一体誰なんだ、赤鼻、ガンガ)
フロル:「何だ、こんなところにいたのか、一人で何やってんだ?」
タダ:「え、いや、何持ってるんだ?」
フロル:「酒だ、一緒にやろうぜ。ほい、お前の分、飲めよ。まあ、座れよ」
タダ:「ああ…」
フロル:「53日、早く終わんないかな」
タダ:「まだ一週間も経ってないじゃないか」
フロル:「俺の星、今頃春だ、お前んとこは?」
タダ:「シベリスは一年のほとんどが夏さ」
フロル:「へぇ…お前、両親は?」
タダ:「…両親は、いない」
フロル:「ごめんよ、タダ、俺…」
タダ:「両親の記憶が全くないんだ、物心ついた時から村の長老に育てられたんだ」
フロル:「ふん…長老って、どんな人だ」
タダ:「僕の村は小さくて、貧しいのさ、だから、長老は村の神官だし、裁判官だし、医者だし、教師だし、僕にいろんなことを押し込んでくれた、直感力とかね。僕は宇宙パイロットになる、長老にそう誓って出てきたんだ。だから、テストに合格したら、パイロット養成コースへ進もうと思ってるんだ」
フロル:「宇宙船のパイロットか」
ガンガ:「どうもおかしいな」
タダ:「やっぱりずれてるんだ」
バセスカ:「どうした」
ガンガ:「船の軌道だ、黒い星の軌道からどんどん外れていっている」
バセスカ:「なに?」
タダ:「最初に船に来たとき、二度爆発が起こったろ?あれでずれたんだ」
四世:「くそ、いつになったらこの船のスクリーンはまともにうつるんだ?今日でもう四週間だぞ」
アマゾン:「チェ、勝手なことばかり言うもんだぜ、コンピューターの回路は回復したんからな」
ガンガ:「こっちの回路のセットが違ってんだかもしれない、もう一度点検してみよう」
タダ:「無理するなよ、ガンガ」
ガンガ:「はは、もうすっかり治ったさ、並な体じゃないからな」
赤鼻:「それにしても熱いな、まったく」
フロル:「ああ、ボロっちい船、スクリーンが馬鹿なうえに、クーラも利かねえときてるんだもんね」
トト:「スクリーンが復活した!」
「やったぜ」
「何だ、あれは?」
タダ:「青い太陽だ」
ガンガ:「今まで黒い星の影になっていたんだ」
ヌー:「不吉だ。私の星では、重なる星は凶事の前触れといわれている」
四世:「へ、そんなものは迷信さ」
ヌー:「あなたの星には季節はないのか?」
四世:「季節くらいはあるさ」
ヌー:「星の位置は季節を支配し、生命をも支配する。私の星ウィヌドーは太陽の周りを48年かかって回ります、私たちは春に生まれ、春に死にます、一生に一度も夏しかない。生と死、それは宿命です」
フロル:「へぇ、暑い暑い、暑いな…シャワーでも浴びなきゃやってらんねえや」
アマゾン:「水の出が悪いぜ」
フロル:「あ、そう、まったくよ、毎日毎日この暑さじゃやりきれねえよな」
アマゾン:「ああ」
フロル:「このまま太陽に向かっていったらどうなるんだこの船」
アマゾン:「さあな」
フロル:「キャアアア!!」
アマゾン:「どうした、フロル!どうした?…なんだよ!」
フロル:「何が水の出が悪いだよ!もう、溺れるかと思ってたまったく」
アマゾン:「Σ(゚д゚|||)!!」
フロル:「気まぐれのシャワーめ!よ、アマゾン悪いけど後で見ておいてくれよな」
アマゾン:「(;゚Д゚)!あ、いや、あ痛え!あ、あいつ!タダ、タダ!タダ!わあ、タダ!!」
バセスカ:「フロルが女性?本当かそれは?」
アマゾン:「本当だ、見ちまったんだよ、シャワー室で」
四世:「そうだったのか、道理で細くてなよなよしているはずだ」
アマゾン:「どうするんだよ、タダ!」
タダ:「ど、どうするって…」
四世:「どうします、王様?」
バセスカ:「もし本当にフロルが女性なら、今後はそれなりの扱いを考えねばならぬな」
フロル:「ああ、さっぱりした」
アマゾン:「きゃ!(。Д。)ノ!!」
タダ:「フロル!」
フロル:「よ、飯の支度ができてるか?…なんだよ、みんなどうかしたんのかよ」
四世:「フロル、君は女性なのか?」
フロル:「なに?!」
四世:「アマゾンが見たんだ。なぜ今まで隠してた?」
フロル:「バカ野郎!」
四世:「な、何をする!」
フロル:「どこに目をつけてやがる、頓痴気!女ってのはバストがあるもんだぞ!それでいやあタダのほうが胸囲があるじゃんか!俺のどこが女だと言ってんで!」
バセスカ:「では男か?テスト前にセックスチェック受けたはずだ、男性女性どっちらにチェックされた?」
フロル:「どっち、どっちでもええじゃんか、そんなの!」
ガンガ:「最終テストは遊びではないぞ、フロル」
四世:「女性なら女性と言うんだ、それとも君が11人目か?」
フロル:「なに?!あ、ちょっ、何しやがってこの!下ろせ馬鹿力!下ろせって言ってんだよ」
ヌー:「メニールがこんなことをしてはいけない」
フロル:「な、なんだよ、メニールって」
ヌー:「あなたはメニール、私の星の言葉で天使、まだ男でも女でもない」
アマゾン:「男でも女でもないって?」
タダ:「両性体」
四世:「両性体?」
タダ:「男女未分化の完全雌雄同体、そうだろ、フロル」
フロル:「ああ、このテストに受かったら、許可が下りるんだ、男になってもいいって!」
バセスカ:「つまりなにか、君は男になるためにテストを受けに来たんのか?」
フロル:「ああ、そうだよ」
タダ:「ヌー、君は最初から分かっていたんのかい?」
ヌー:「はい、私も同族種ですから」
タダ:「じゃ、君の星も…」
ヌー:「はい、私たちは男女未分化のまま育ちます、一定の年齢に達すると、ホルモンの分化によって男か女かに決まるのです」
フロル:「俺ん星じゃ、最初に生まれた子でねえと男になれねんだ、人口比の制約があって限られてるんだ。俺、末っ子でよ、もう二年すると体温が4度ほど上がる、そしたら、女性用のホルモンを与えられることになってるんだ。でも、コスモ・アカデミーに入学できりゃ、それは名誉だもんな、特別に男性用のホルモンもらえるんだ」
アマゾン:「そんなに男がいいのかね、俺の星じゃ、女は大切にされるぜ」
フロル:「俺ん星、一夫多妻制なんだ」
タダ:「一夫多妻って?」
フロル:「つまり、俺ん星の制度では、男が統治して、女が働くんだ。平均して、男一人に女が4・5人の割合ってとこかな、誰だって、女になると決まったら、大抵はすぐに結婚しちゃうね、俺の両親も、俺が女になったら、隣の領主のとこ嫁にやるつもりなんだ。その領主ってのが8人も奥さんがいてよ、そのうえ、18も年上なんだ、そりゃ、女はきれいだよ、外見はね、でも、それっきりだもん。姉上たちの結婚式よ、いくつも見てきたけど、でも、兄上の成人式が一番素敵だ、凛々しくてさ、うっとりしちゃった、やっぱり、生まれたからには男になって、あれくらい持て囃されてみたいや、ふふ」
四世:「くそ、なんだよこの暑さ」
石頭:「やはり徐々に惑星を離れて、青い太陽の方角へ迎えつつある」
ガンガ:「熱量のデータが出たぞ、機関部の熱量調整タンクが故障していて、吸収した太陽熱をたくわえらずに58%は船内に放出されているんだ」
タダ:「ここにあるラジエーターパネルも作動していない、外部の熱がどんどん船体に吸収されつづけているんだ」
四世:「じゃ、このまま、太陽にむかえば」
ガンガ:「そう、温度上がる一方だ」
アマゾン:「なんてこった!」
四世:「軌道がずれたのは、もしや11人目のせいじゃないでしょうね」
バセスカ:「分からん、どこまでがテストで、どこまでが11人目の仕業なのか」
フロル:「う、ん、くそ…うん」
タダ:「手伝うよ、フロル」
フロル:「余計なことをするんな、俺がきゃしゃでメニールだからってバカにすんなよ、男になったらお前なんかかなわないくらいの体格になってみせるからな」
アマゾン:「ははは、女になったら、かなりのべっぴんになるのにな、しかし恋人にしたら、大変だろうな、あの跳ねっ返りじゃん」
タダ:「そうだな…」
トト:「ここだけじゃないんです、温度が上がったせいか、キャビン区域のあちこちで勢いよく茂り始めているんです」
四世:「ジャングルになりそうだな」
タダ:(ツタが伸びる、温度が上がる、もっと伸びる、温度が…あ!)
アマゾン:「タダ!」
フロル:「タダ、どこ行くんだよ!」
タダ:「これだ!」
フロル:「何調べてるんだ?電導ヅタ…」
タダ:「電導ヅタ、セグル系の温帯産鉱物性植物、人口改良種は銅・ニクロムのかわりに配線に使用される、表皮は熱をよく吸収して、ツタの発育を促すが、一定熱量に達すると、自己防衛のため、表皮が白い結晶体を作り出して、断熱をおこなう。この結晶体には、発見者デルの名を取ったデル赤ハン病のウイルスがしばしば発生するんだ」
フロル:「デル赤ハン病?」
タダ:「予防薬は、弱性ウイルスの接種から採集したワクチン」
(数が限られています!マウスがもういません!)
タダ:「ワクチン…」
「マウスが、マウスがもういません!マウスが!」
「マウスがもういません!子どもだけでまだ500人以上いるんです」
「マウスから作るワクチンは200人分もありません!五歳以下の子供の分しか…」
「一週間以内に救助船が来なければ、この船は全滅です!デル赤ハン病は空気伝染ですからね」
「遺体をどこにおきますか?真空パックの数は1000もありません!」
「すぐ銃を密封するんだ、急げ!」
「ドクター、ワクチンをくれ!」
「俺の息子は八歳なんだ」
「ドクター!」
「私の家族はどうなるんだ!」
「いかん!マウスのケージに触っちゃいかん!」
タダ:「いたんだよ!」
フロル:「タダ、どうしたんだ?」
タダ:「いたんだよ!この船にいたんだよ!」
フロル:「タダ、しっかりしろ!タダ!タダ!タダ!」
(タダ、タダ、タダ…)
タダ:「母さん!」
(さあ、お飲みなさい、ぼうや、このワクチンを、さあ、ぼうや)
(お母さん…)
タダ:「忘れていたんだ、何もかも、失っていたんだ、四歳の時の記憶…あ!」
(この船のキャプテンですね、この子、この子をお願いします)
タダ:「長老!」
(母さん…母さん!)
タダ:「母さん!母さん!マウスがいないんだ、11人いるのに、11人いるのに!」
バセスカ:「今のタダの話が本当なら、我々は大変な危機に直面していることになる」
四世:「乗員乗客の九割が死亡していたなんて、えらい事件じゃないか、テラ系の君たちは知らなかったのか」
チャコ:「無理言うな、その頃俺たちは四歳やそこらだぜ」
アマゾン:「死の船だったんだな、このエスペランサ号は」
ガンガ:電導ヅタに関する実験結果が出た、あまりうれしい結果とはいかなかったが、電導ヅタを密封ケースに入れて加熱したら、40度で結晶が発生した、さらにデレ赤ハン病のウイルスもだ」
バセスカ:「40度か…」
ガンガ:「ちなみに、熱量データからの様相では、船内温度が40度になるのは、8日か9日の後だ」
四世:「なに?!じゃ俺たちは死ぬのか?」
アマゾン:「ふん!冗談じゃないぜ、まったく」
赤鼻:「そんな、死ぬなんて…」
トト:「体中に赤ハンができて…」
フロル:「薬は?」
ガンガ:「この病気にかかった死んだマウスからなら、予防ワクチンが採れるんだが」
四世:「マウスなんていないぞ、どうするんだ!」
石頭:「どうだ、スクランブルボタンを押すか?」
フロル:「冗談じゃねえ!不合格になれってんのか、最終テストのここまで来てよ」
赤鼻:「で、でも…」
フロル:「バカ野郎!俺は王様みたいに遊びでテストを受けてんじゃねえんだぞ」
バセスカ:「私は私の名誉をかけているんだ」
フロル:「こちとら一生の問題だ、男になるか女になるか」
アマゾン:「まだ考える時間はあるぜ」
チャコ:「そうだ、まだ押すのは早い」
「そうだ」
「そうだよ」
「絶対大丈夫だよ」
「はは…」
タダ:(長老…僕たちはどうしたらいいんですか、コスモ・アカデミーを受けると言われたあなたは、僕はこの船に乗ることを予知されていたんですか)
バセスカ:「こいつを直さなきゃならんのか」
ガンガ:「太陽熱の吸収を調整するラジエーター回路は完全にいかれている、かなり手間がかかりそうだな」
フロル:「ええ?複雑…」
タダ:「こっちもやられてる、修理した跡はあるな」
アマゾン:「前の連中も必死だったんだろうさ、急激に熱量が移動したせいでぶっ壊れてちまったらしいや、ワープの失敗が原因かもな」
ガンガ:「いきなりあの太陽に出くわしたかもしれんな」
バセスカ:「今日の食事当番は誰だ?」
トト:「ええ…(゚〇゚ ;)」
バセスカ:「スープの中にフォークが入っているぞ」
トト:「あ…あの、ぼ、僕、す、僕、ついうっかりして」
バセスカ:「貴様!私の胃にあなを開けるつもりか」
タダ:「よせよ、王様、この暑さだ、誰だって頭がぼっとなるさ」
バセスカ:「タンクの修理はいつ終わる」
ガンガ:「分からんな」
バセスカ:「分からん?病気の発生まで5日もないんだぞ」
ガンガ:「みんな精一杯やってるんだ」
バセスカ:「やり方をもっと工夫したらどうだ!…誰だ!」
フロル:「いい加減にしな!あんたは自分の国じゃ王様かもしんねえけどよ、ここじゃ実践的知識何一つ持たねえデクノボーじゃねえか?なんもできねえくせに、うだうだ吐かすんじゃねえ」
バセスカ:「デクノボーだと?」
フロル:「ああ、ヒステリーの役立たずさ!」
バセスカ:「き、貴様!!」
フロル:「やるか?この気障野郎!」
四世:「な、なんてことするんだ!」
フロル:「てめえもやるか!」
タダ:「止せ!フロル!」
フロル:「てめえ!やりやがったな!」
四世:「この野郎!」
ガンガ:「四世、落ち着け!」
石頭:「おい、みんな、ここは冷静に話し合おうではないか」
フロル:「うるせえ、石頭!」
アマゾン:「やっちまえ!てめえ!」
トト:「なに、僕の作った料理に何するんですか」
チャコ:「何だよ!大体貴様の味付けは俺には合わねえんだよ!」
フロル:「男は味くらいのことでがたがた言うんじゃねえ!」
バセスカ:「やめて貴様ら…!」
赤鼻:「ああ!まだ何も食べてないのに!」
ガンガ:「みんな、いい加減にしろ!お前たちもだ!」
フロル:「あれ?」
赤鼻:「どうなるんだ、俺たち…」
ヌー:「宿命、これもすべて宿命だ」
フロル:「くそ、頭がグラグラする」
ガンガ:「あ!」
タダ:「ガンガ!」
アマゾン:「危ない!」
赤鼻:「ひゃ!やれっちまう!」
アマゾン:「くそ…なんてこった!せっかく修理が終わりかかったんのによ!」
バセスカ:「何が起こった!船内温度が一気に3度も上がったぞ!」
タダ:「一気に3度も?」
バセスカ:「もう方法がない!諦めろうというのか?え?なぜワクチンがないんだ、ワクチンさえあれば、温度が何度になろうと心配はいらないんだ!」
ガンガ:「無理を言うな、マウスがいないし、日数もない」
ヌー:「宿命のままに従うしかない」
バセスカ:「貴様の哲学などを聞いている場合ではない、一体誰のせいでこうなったんだ、誰のせいだ!」
タダ:「止せよ、王様!」
バセスカ:「お前はいいさ、デル赤ハン病の予防処置を受けているんだからな、何が起こってもお前だけは助かるんだ、なぜ、なぜお前はこの船に乗り合わしたんだ!なぜ、この船には11人いるんだ!偶然だといったな、偶然だと?本当にそうか?どうなんだ!」
赤鼻:「動力レバーのところにいたのは、タダだ」
アマゾン:「そうだ、あそこにいたのはタダだ」
四世:「11人目だ、お前は11人目だ」
バセスカ:「何もかも貴様のせいだったんだ、貴様が」
赤鼻:「11人目だ」
チャコ:「11人目は、お前だったんだ」
タダ:「ち、違う、僕は」
バセスカ:「逃がすな!やつを殺せ!殺してやつの血液からワクチンを取り出すんだ」
石頭:「落ち着け!落ち着くんだ王様!タダの血液からは」
バセスカ:「放せ!」
石頭:「ワクチンなど採れんぞ」
バセスカ:「うるさい!逃がすな!」
ガンガ:「フロル、お前までか…」
フロル:「一番頭きてるのは俺だよ!あいつが動力レバーをたすのははっきり見たんだ!」
ガンガ:「フロル!」
アマゾン:「どうだ、やつを探せ!」
四世:「あ!あそこだ!」
アマゾン:「追え!」
バセスカ:「向こうへ回れ!挟み撃ちだ!」
四世:「アマゾン、そっちだ!」
フロル:「くそ」
四世:「そっちにはいないのか?」
チャコ:「いや、いない」
四世:「くそ、一体どこに隠れたんだ」
チャコ:「あ、いたぞ!上だ!」
アマゾン:「エレベーターだ!」
四世:「居住区へ逃げるつもりだぞ!ホールへ回れ!ホールへ!」
タダ:「赤鼻?!」
赤鼻:「…あ、ああ!!!」
タダ:「あああああああ!」
フロル:「やったのか?」
赤鼻:「こ、殺しちまった!」
トト:「あ!」
タダ:「(…暑い、眩しい…あれは!)あ…フロル」
フロル:「気がついたか、出ろよ、王様たちが尋問だってさ」
タダ:「俺、随分ねていたのか」
フロル:「三時間ほどかな、あれからまた2度上がっただぜ」
タダ:「ガンガは?」
フロル:「メディカルルームで眠ってろ、あのあと吐いたりして大変だったんだ」
タダ:「ところで、僕は打たれたじゃ…」
フロル:「赤鼻のやつ、銃のメモリを一番弱くしてたんだ」
タダ:「君は本当に僕が11人目だと思っているのか」
フロル:「じゃ、なんで逃げた?11人目じゃなきゃなぜ!…あ、暑いな、まったく、あ!…タダ、俺を殺せ!俺は卑怯者じゃねえ!お前に銃を奪われて、脅かされたなんて、思われたくない!殺せ!」
タダ:「フロル…それ、返すよ、僕がガンガのところに行く、みんなを呼んできてくれ」
ガンガ:「タダ…」
タダ:「ガンガ、熱はどうだ?体を見せてみろ」
ガンガ:「もう大丈夫だ」
タダ:「実験の時、感染したな」
ガンガ:「やっぱり赤ハン病なのか」
タダ:「ああ、しかし、これはもう…」
四世:「タダ、もう動くな」
バセスカ:「こっちへ来い」
ガンガ:「近寄るな、俺は発病したんだ」
バセスカ:「なに?」
四世:「お、俺たちにうつし気じゃ」
タダ:「ガンガは治りかけているんだ、そう、熱さえ下がれば、ガンガの体液からワクチンが採られる」
バセスカ:「ワクチン?」
ガンガ:「なるほど、俺の体がクロレラ用のサイボーグだってことが役に立ったんだ」
四世:「それは、ワクチンでみんなは助かるということか」
バセスカ:「そういうことだな」
「よかった」
「発病しないで済むんだ」
バセスカ:「待って!喜ぶのはまだ早い、ガンガの熱が下がってワクチンが採れるのと電導ヅタの結晶ができて発病するのと、どっちらが先か」
トト:「そうです、これは時間との戦いです」
チャコ:「そうだ、あと何時間かで、温度は40度をこえるぜ」
タダ:「だから、だから僕の言うことを聞いてくれ!船の温度を下げる方法があるんだ!」
バセスカ:「どういうことだ?それは?」
タダ:「先、エレベーターの中で気がついたんだ、この船はてっぺいを太陽に向けている。だから、エレベーター庫を使って、上層部の居住区を爆発させれば、軌道を変えられる!」
アマゾン:「そうか、この船の軌道がずれたのは最初の爆発だった、それをもう一度やってみるってことか」
バセスカ:「なるほど、危険かもしれんが、爆発によって機動を変えれば青い太陽から脱出できる、そうすれば当然船内の温度も下がるというわけだな」
タダ:「この船内には、まだたくさんの爆発物がセットされている、それを取り外して、利用するんだ!」
赤鼻:「あ、あの…もしも船が大きく壊れたりしたら…」
チャコ:「何言うんだ!これは絶対やってみる価値があるさ」
トト:「そうです、手をこまねくよりの方案でやりましょう(?)」
アマゾン:「そうだ」
チャコ:「賛成だね」
四世:「どうですか、やってみましょうか」
バセスカ:「よし、やることに決定しよう、だが作業が終わるまではタダを監禁する」
フロル:「なんでまた!」
ガンガ:「爆発物を探し出すのに、タダの直感力が必要ではないのか」
四世:「え?またまた直感力を当てにするのかい?」
ガンガ:「時間がないんだ。コンピューターで船内図の回路を一つ一つチェックしていたら、何時間かかるか分からんぞ」
トト:「そうですよ」
チャコ:「早く取り掛かんなきゃ」
バセスカ:「しかし、タダを信用するわけにはいかん」
ガンガ:「信用しろ、王様!」
バセスカ:「できん」
ガンガ:「信じろと言ったら信じろ!11人目はこの俺だ!」
バセスカ:「もしもお前が11人目だとしたら、なぜ、なぜだ!」
ガンガ:「おと、撃つなよ、俺は生きたワクチンだからな」
ガンガ:「悪気がなかったんだ、自分の体を実験するために忍び込んだだけだ」
アマゾン:「俺は信じないぜ、ガンガが11人目だなんて」
チャコ:「そうですよ」
トト:「いくらなんてもね」
四世:「だったらこいつはどうなんだ?」
タダ:「何言ってんだ!そっちが勝手に決めつけておいて」
フロル:「いい加減にしろ!11人目がどうしたよ!11人目がなんだってというんだ!そんなもん、始めからいないんだ!最初の自己紹介の時、タダが言ったとおりじゃんか!お互いへたなかばいっこなしだぜ、時間がないんだ!作業にかかろうぜみんな!」
アマゾン:「そうだそうだ、口の悪い割にはいいこと言うぜ」
チャコ:「よし、やろう」
トト:「やろう」
フロル:「さあ、タダ、爆発物の場所指示するんだ」
四世:「え…あの」
ガンガ:「みんなが待ってるぜ」
バセスカ:「お前には負けたよ」
チャコ:「これか」
アマゾン:「まったく、面倒くせいところに仕掛けてやがるぜ」
タダ:「あそこにもある!」
バセスカ:「全員シートにつけ」
アマゾン:「エレベーターを上げるぞ、20階だ」
バセスカ:「よし、エレベーターを止めろ」
アマゾン:「OK」
タダ:「隔壁を閉じるぞ」
石頭:「エレベーターを周りある居住区の隔壁も閉めないと危険だぞ」
タダ:「OK」
トト:「あ…温度が40度」
バセスカ:「秒読みを開始する」
バセスカ:「L25Bの隔壁が破れただぞ!」
タダ:「隔壁F-Bを閉鎖する!」
チャコ:「見ろ!太陽から遠ざかっていくぞ!」
タダ:「やった!」
フロル:「やっほー!」
「助かったんだ!」
バセスカ:「成功だ!」
四世:「やった!」
アマゾン:「大成功だぜ」
「船は順調に軌道を回復している」
ガンガ:「もうトラブルは起こらんさ」
バセスカ:「我々は幸運だったかもしれん」
チャコ:「取立ての果物だよ」
「うわ…」
フロル:「うまそう!」
タダ:「どうしたんだ、フロル?」
フロル:「な、何でもない」
タダ:「ちょっと!その手を見せてみろ!」
フロル:「なんでもないったら」
タダ:「いいから見せろ!」
フロル:「やめろ!何するんだよ!」
タダ:「フロル、これは…」
タダ:「間違いなく、デル赤ハン病の症状だ。ワクチンがフロルにはきかなかったらしんだ」
フロル:「大丈夫だよ、あと八日くらいなんとかなるさ、ガンガだって、すぐ治ったじゃんか」
ガンガ:「俺の場合とは違う」
タダ:「八日経たないうちに死んじゃったらどうするんだ、フロル」
フロル:「俺が、俺が死ぬわけねえだろう!」
トト:「ボタンを押しましょう」
フロル:「よ、止せよトト、冗談だよな、な、な、みんな、今のは、トトの冗談だよな」
チャコ:「ここまできて、残念だけど、フロルの命にはかえられない」
アマゾン:「そうさ、受験のチャンスはまたやってくるからな」
四世:「国に帰るのは三年遅れるだけさ」
赤鼻:「やるだけのことはやったんだし」
フロル:「くそ…バカ野郎!どうしたんだお前ら、合格したくねえのかよ!」
ガンガ:「合格する前に死ぬぞ、フロル」
フロル:「死んだほうがましだ!女になるくらいなら、今まで45日間何のためにみんなで頑張ってきたんだ、何のためだったんだ!え?タダ!アマゾン!ガンガ!合格のためじゃんか!な、そうだろ、王様!」
バセスカ:「絶対多数だ、フロル。スクランブルボタンを押す」
タダ:「フロル、熱があるんじゃないか」
フロル:「ないよ、俺、最後のチャンスだったんだ、どうしても、男になりたかった」
タダ:「フロル、この広い宇宙を見てごらんよ、生きているのは僕たちだけじゃない、あそこに輝いている無数の星たち、それぞれが命の息吹を確かめ合っている、そんなふうに見えるじゃないか、フロル」
フロル:「うん、見える、とても素敵だ」
タダ:「フロル、僕の星に来ないか、僕と結婚しよう」
フロル:「だって、俺が変化して女になるの、ずっと先だぜ」
タダ:「だから待つよ」
フロル:「俺、美人になるかどうか、分からないぜ」
タダ:「美人になる。あ、どうした?」
フロル:「やっぱり、熱が…あるみたい」
「お、救助隊が来たぞ」
「思ったより早い」
「病人はどこだ」
「ここです」
「全員直ちに救助隊に連れ」(?)
四世:「一人多いって言われるだろうな」
アマゾン:「いいじゃないか、どうせ、あ、9人しかいない!」
タダ:「え?」
赤鼻:「一人少ない!」
バセスカ:「誰か来たんだ」
「全員着席。グレン教官、どうぞ」
「ああ!」
「え…」
「石頭?!」
石頭:「私がグレン教官、11人目だ。今回の最終テストは、君たちの共助性と適応性を試してみることが目的だった。宇宙には常に、思いがけない状況がある。不条理な11人目が存在するようなものだ。私の任務は君たちのグループに紛れ込み、トラブルを起こして、できるだけ早くスクランブルボタンを押させること、および、君たちの生命を守ることの二つだった」
バセスカ:「ではどうしてタダの直感力で見抜けなかったのですか、いし、グレン教官」
石頭:「私のテレパシーのほうが勝っていたのだ」
タダ:「すると」
石頭:「ガンガの事件の時、スイッチを入れるようテレパシーで命じたのは私だった、思いがけない結果になって本当に済まなかった、爆発による軌道のずれと、電導ヅタによる病気の発生は予定のプログラムにはなかった、大学らのミスだ。にもかかわらず、君たちは45日間の共同生活を送った、このテストに参加したグループの中で、君たちの成績はベストワンだ。何しろ、35日間以上耐えたのは、70グループのうち6グループしかなかった、君たち全員、合格だ!」
四世:「合格?」
ガンガ:「合格だって?」
石頭:「コスモ・アカデミーを代表して、心から君たちの合格を祝福する。おめでとう!」
「おめでとう!」
チャコ:「はははは!やっほー!」
バセスカ:「合格だ!」
四世:「王様!」
ガンガ:「タダ!よかったな」
タダ:「ありがとう、ガンガ!」
チャコ:「タダ!」
赤鼻:「タダ!」
トト:「一緒に勉強できますね」
タダ:「うん、トト!」
バセスカ:「タダ、いろいろすまなかった」
タダ:「王様…」
バセスカ:「国へ戻ったら二度と会えないんが、君のことは決して忘れない」
タダ:「お元気で」
バセスカ:「うん」
タダ:「四世」
四世:「よかったな、直感力、大したやつだったぜお前は」
タダ:「こいつ!」
アマゾン:「タダ、これからも仲良くやろうぜ」
タダ:「ありがとう」
アマゾン:「入学式でまた会えるな」
タダ:「うん」
アマゾン:「フロルのやつ、晴れて男になれるんだよな」
タダ:「あ、そうだな、うれしいだろうな…」
石頭:「タダ、おめでとう」
タダ:「ありがとうございます、グレン教官」
石頭:「君をこのグループに入れたのは、君の長老からの知らせで、君がエスペランサ号の生存者だと分かったからなんだ」
タダ:「長老が?」
石頭:「長老はコスモ・アカデミーの先輩でもある、君が見事にその期待に応えることができた、胸を張って、長老に合格を報告したまえ」
タダ:「はい!」
フロル:「タダ…」
タダ:「や」
フロル:「や」
タダ:「どう?」
フロル:「うん、まだ信じらんねえな、合格してたなんて、俺、母上や姉上にも鼻が高いや」
タダ:「本当によかった、本当に…」
フロル:「俺…お前がそう言うんなら、なってもいいや、女に…」
タダ:「あ?あ…」
トト・ニ
卒業後、植物分布に関する新説で注目を浴びる
チャコ・カカ
小規模ながら、星間貿易会社を設立。
ドルフ・タスタ
星間裁判所の判事補に任命される。
ヴィドメニール・ヌーム
詩集「メニールの夏」を出版、ベストセラーになる。
ガンガス・ガグトス
母星で新しい風土病対策に取り組む。
ソルダム四世ドリカス
母星で行政官として多忙な日々を送る。
アマゾン・カーナイス
作曲家として活躍。
マヤ王バセスカ
母星の資源開発計画を推進、四世の妹と結婚する。
グレン・グロフ
宇宙航行訓練中の事故で生徒を救助するため殉職。
タダトス・レーン フロルベリチェリ・フロル
二人はパイロット養成コースを卒業後結婚。
(終わり)