2021-12-13 19:05 /
評価点
ストーリー

表のサクセス「甲子園ヒーロー編」は過去作にも増して人間的に重苦しい学校教育と家庭を描いた作品。「正義」のヒーローの「不正義」など、単なる二元論で終わらない話が展開される。

今作の悪役であるヒーロー・監督・校長は非道な行いや私欲のために行動をする。
が、その誰もが単純に悪人とは言えない人物であり、校長はイベントで事故からメガネの湯田を庇う。
佐和田監督やピンクは7の主人公達から見れば嫌な奴ではあったが後に再登場した時には9主人公や12主人公とそのチームを助けてくれる。そのバックボーンを知ると何とも言えない気分にさせてくれる。
このようにプレイヤーに人生や生き方を問う描写のあるシナリオは、毎度のことながら好評である。
真エンドルートに入った際に聞ける「正義の反対はまた別の正義、あるいは慈悲・寛容」「悪はロマン」という話は人気が高い。
ちなみに同社のゲーム『武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2』のとあるキャラのシナリオは、これをテーマにしたシナリオとなっている。
彼女シナリオ

彼女シナリオが前作より濃くなった。
マネージャー・後輩・クラスメイト・親友の妹・謎の女子高生と、これまでのシリーズと比べるとかなりの正統派がそろっている。
-
前述した隠し彼女の「真央」はヒーローに大きく関わっている人物であり、このルートに入ると様々な事実が明らかになる.
真央はヒーローの仲間の「ブラック」であり主人公によって生み出された存在の一人である。
だが主人公や黒打ブラックとの交流によって「悪と戦う」というだけではなく「ボランティア」というヒーローの在り方を見出し、レッド達のやり方から造反。彼女のルートではヒーロー戦で主人公に助力しようとする。
本作の彼女候補では実質唯一「ヒーロー」の在り方に深く関わった人物であり、ヒーロー戦がより熱くなる。決戦前に真央の窮地に気付いた主人公が単身で助けに行く展開は『1』の智美ルートを彷彿させる。
なおこの真央は以後のパワポケシリーズでピンクやカズ(10の彼女候補キャラ)らと共にヒーロー活動する事になり、11・12・14では重要なサブキャラとして登場するが、「充実した私生活」を送ってる故か仲間キャラの恋愛絡みで各作品の主人公に忠告・助言をしたりする。
後の作品の公式Q&Aでは芹沢は7主人公一筋である故に後のシリーズでは攻略ヒロインには出来ないと明言されたため、彼女が交際している人物は消去法で7主人公である可能性が高い。
だが真央が7主人公と交流を続けてるのは前述したトゥルールートのみでそれを見るにはハードルが高い。重要なサブキャラでありながら実機でそのルートを観る事は難しい。この事は『10』の天月五十鈴にも通じる問題である(高難度ヒロインが正史ヒロインになって後の作品に関わる事)。
前述のとおり、彼女のトゥルーEDに行くのは至難の業。その分、トゥルーEDは「ハッピーエンド」そのものでありグッドEDとの対比もあって感動できる

また「緑髪(みどりがみ)の人」こと博多幸博氏が手掛ける、妙に濃い緑髪の彼女である「リコ」も本作より登場。
エキセントリックながらも熱いラブコメが展開される。
後輩キャラ「春香」も攻略難易度の低さやバッドENDが存在しない後味の悪くなさ、4の「ユイ」を彷彿させる「○><」のポーズの可愛らしさから人気は高め。
真央、リコ、春香は後のシリーズにおいて裏で再登場した時に大きな存在感を出しており、シリーズ全体でも人気の高いキャラクターに成長した。また春香は『11』で東先輩と共に再登場して11主人公を助けてくれる。
ただ、前述の後輩、緑髪娘、隠し彼女の3名に人気が集中している感は否めず、マネージャー、スーパーの娘、親友の妹はあまり評価されていない。
マネージャーの「霧島」は途中までは王道ヒロインなのだが、付き合うとイベントによってヒーローの中身が空っぽ(=ただの人間ではない)という事を知り洗脳されてしまう。
ヒーローを野球で撃破した直後に彼女に電話しないと洗脳が解けずにBADENDになってしまい超特殊能力が入手できない。ヒーロー戦を終えた満足感で忘れがちな落とし穴と言えよう。
後の『ダッシュ』のプロフィールでは冗談めかして未だに洗脳されているなどと語られている。決してスペックは悪くないのだが洗脳ネタでかなり割りを食っているヒロインと言えるだろう。
『14』のトツゲキ甲子園でのマネージャーキャラの一人だが、この時も「ヒーローに乗っ取られた花丸高校」との対戦前に洗脳されてしまう。ただこちらはヒーロー達を倒すと自動的に正気に戻ってくれるのだが…。
攻略しないと仲間と結ばれるスーパーの娘、主人公よりも主人公の母親と仲良くなる親友の妹などはやや空気扱いされる所もある。
スーパーの娘はシナリオには毎回それなりに関わってくるものの一定確率で絶対に彼女にできなくなるということもあり、敬遠されがち。
親友の妹は公式でも「中田」なのに「長田」と誤植されたり「主人公より主人公の母親と仲良くなるから不人気」と悪ノリで弄られている節もある。『13』のセンシュクラッチでは大きく再登場しているのだが…。
彼女キャラの魅力やシナリオ自体の評価は高いものの、その良いシナリオを楽しむ為には前述の通り高い難易度とダメダメな野球部分が大きな壁として立ち塞がる。非常にもったいない。
裏サクセス

表と比べると比較的明るめのシナリオになっている。過去作のキャラも多数登場しており、こちらも好評。
何より、悲惨極まりない野球をする必要がないというのが利点。前作『6』と違い野球の試合は一切ない。
歴史ネタ映画ネタなど盛りだくさんであり、かなりマニアック。実在の人物をモデルにしたキャラも多い。
機械鉄人、恐竜など時代錯誤な敵やまだ存在しないトンプソンM1短機関銃などが登場するがこれらは4以来いつものことなのでそれほど問題にされていない*39。
こちらもクリアだけならある程度適当に進めても可能。表よりもいい選手が作りやすいため、基本的にはこちらがメインとなりがち。
-
本作の黒幕も「カメダ」だが、本作はガンダーロボの後に「真のラスボス」が登場する初の裏サクセスとなっており、以降の作品でのカメダ冷遇のフラグが立っている。この作品の後も亀田は曽根村・ハームレス・ギャスビゴー星人・グントラムにラスボスの座を奪われ続けることになる。
なお本作の「真のラスボス」は『6』に出てきたほーむらんをうつけどひっともうつ彼……「ほるひす」である。当時発売されたファンブック「サクセスやろう」という本の人気投票でも上位であり、当時の読者公募キャラでは最も出世している人物であろう(ちなみに、野球人形コンテストで優勝するには投手で変化球パーツを買いまくるのが一番楽)。
ただし、本シナリオのガンダーロボを腕で軽くひねりつぶすくらいデカい強敵である。攻撃方法も多彩で、仲間を育てて強力な武器を持たせて万全な状態で挑んでも全員無事にクリアするのは至難の業。
あまりにもデカすぎる為、3人目のHPゲージが隠れてしまっている。
総評
野球ゲームで野球の出来が非常に悪いというのは致命的であり、それが本作の評価に響いたようだ。
だが、今から遊ぶには野球ゲームとしての出来は壊滅的だが、そもそも今から旧ハードのGBAにそれを期待するのも無理はあるだろう。
現状「あえてGBAで野球ゲームとしてパワポケを遊ぶ」のなら『6』が一番良いという評価が下されている。DSでの『10』以降ならもっと遊びやすい。

一方シナリオを楽しむことを目的としているパワポケファンからの評価は高い。
この『7』で初登場したヒーロー達はシリーズの重要な存在としてそれぞれ愛する者を守るといった「幸せ」のために戦い続けるようになり、サイボーグや超能力者といった「野球離れした人々」と深く関わり、そして台頭するジャジメントやツナミといった裏社会のカウンターとして深く対立していく。
さらにギャルゲーとしての方向により一層力を入れ始めたことから、『6』と並んでおそらくシリーズの転機になった作品。
表サクセスや、後述のバカげたテレビCMなども含めて、良くも悪くも「ヒーロー」という要素を前面に出した作品とも言える。
野球の出来の悪さをシナリオ、彼女、RPGなど野球以外の要素で帳消しにできるかどうかで評価が分かれるだろう。
開発事情
前作まではそれほど野球に詳しくなかったスタッフが担当していたが、今作は野球に詳しいスタッフが野球の試合部分を担当したらしい。それでこのザマとはどういうことなのか。
しかも攻略本のスタッフのコメントには「前作より遊びやすくなってると思います。」と。ロクにテストプレイもしていない癖にいい加減なことを言い過ぎである。
余談だが本作から「緑髪ヒロイン(本作では『リコ』)」のシナリオを担当する博多幸博氏はパワポケスタッフで珍しく野球が好きなスタッフであり、パワポケには『6』からスタッフロールに名前が確認されるが……。
ファンの間では『7』に並んで『8』の野球パートも併せて批判される事もあるが、『8』の場合はニンテンドーDSにプラットフォームを移行したばかりでノウハウと時間が足りなかったという擁護は出来る。ニンテンドーDSシリーズは実際『10』で3D化して野球パートの出来がかなり良くなった。
『7』の野球パートが批判されるのは『3』から順調に進化してきたはずのGBAパワポケの野球アクションとしては実質的に最終作*40でありながらもこの体たらくだからだろう。
そもそも、何故野球パートにおいては最も評価の高かった『6』の仕様のままにしなかったのだろうか?
余談
サクセス中での対戦校の一校、緑満高校の選手はすべてカプコン製ゲームのキャラの名前がつけられている*41。おそらく『ボクらの太陽』と『ロックマン エグゼ』のコラボが原因だと思われる。
今作の登場人物の一人「有田修吾」はパワプロファンの某お笑い芸人をモデルにしている。
パワプロシリーズでおなじみの「猪狩進」がスポーツドクターとしてパワポケシリーズに再登場している。
パワポケでの進は高校時代の改造手術が原因で野球を断念し、本編では怪我をした主人公に怪我の怖さを説いたりプロ野球で活躍する兄に嫉妬するなど、パワプロでの温厚な進とは一線を画する。
トゥルールートで紅白試合が行われるが、同時期に出た『実況パワフルプロ野球11』の帝王大学における真ルートでも紅白試合で決着をつけるという展開があるが、そちらでは本作と違う和解を果たす展開である。
しかし『パワプロクンポケット9』でも対立していた同士で紅白試合をしての和解展開があり、パワポケとパワプロの本質的な違いというわけでもない。
むしろ『パワポケ9』の主人公はパワポケ14の描写から、本作のとあるヒーローではないかという説もあり、ある意味本作のIF展開と言える。
とあるキャラの元ネタは『みつめてナイト』から引用している。対象年齢の関係上、わからないことを前提に作ってあるので、作品単体では問題にならないが?
開発者がとあるミスリードを『ハンガリアの狼の餌』なるように導いているため、そのことを知らない二次創作を見ると泣きたくなる
『7』の発売日はニンテンドーDS本体の発売日と同日である。
パワポケナンバリングタイトルは『8』からDSへと移行した。
Tags: 游戏