2022-6-23 23:05 /
作者:あむゆま
来源:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=1062386
もちたんのつぶやきで今日がクリスの誕生日だということを思い出し、クリスと新で何か書こうと思いました。数分後、いくら何でも残り1時間じゃまとめるのは無理だと悟りました。無計画ここに極まれり。…なので、C78で発刊した『ためしよみ±0』からちょっと書き加えたりしてみましたよ、というお話です。
声とか。
感触とか。
温もりとか。
吐息とか。
――心地よい、疲労とか。
ぼんやりと。
そんなことを頭の中で思い描きながら、意識は覚醒した。
「……う」
昨晩に色々と無茶をしたからか、思っていた以上に身体中がだるさを訴えている。
だるいだけならまだしも、まだ、猛烈な眠気が襲ってきて――覚醒したばかりの意識が、早々に持って行かれそうになって。
それでもいいのかなあ、と思いながら……
「……た」
気のせいだろうか。
さっきから、心地良い揺らぎが続いている。
「新。起きろ、新」
気のせいだろうか。
さっきから、誰かの声が聞こえている、気がする。
「いい加減にっ……」
気のせいだろうか。
さっきからの揺らぎと声が途切れた、よう、な……
「起きろ馬鹿者っ!」
唐突に。
罵声と共に、布団が捲り上げられた。
「うおっ!」
何事かと周囲を見渡すと、こちらを睨むクリスの姿が目に入った。
「何度起こせば気が済むんだ! もう時間が無いんだから早く起きろ、この馬鹿者!」
「いや、その……ゴメン」
いきなりまくし立てられて、とりあえず謝ってしまう。
「まったく。休みまで叩き起こす方の身にもなってほしい」
「……ん?」
それを聞いて、ふと気付く。
今日は何も予定が無かったはずだ、と。
「そういや、何で起こしてくれたんだ?」
「忘れたのか? あちらに戻って荷物を取って来たい、と言ったのは新だろう」
そういえば、そんなことを言った気もする。
けれど。
それは別に、急ぎでどうこう、という話ではない。
何より、
「……どうした?」
今のクリスは、一糸纏わぬ生まれたままの姿で。
起き抜けの意識をあらぬ方向へ向かわせるには、十分すぎる。
ならば。
「起きないのか? 僕は別に止めないが」
「いや、起きる」
「そうか。それなら僕は先に行く……」
「起きる、けど」
言いながら、俺はクリスの腕を掴む。
そしてそのまま、思い切り自分の方へと引っ張った。
「なっ!」
突然のことにバランスを崩してか、クリスはあっさりと俺の方へと倒れこんでくる。
それをしっかりと抱きしめて、そのまま軽い体をベッドに押し倒した。
「っ!」
一瞬、クリスはわけがわからないという表情を浮かべる。
けれどすぐに俺の行動の理由を理解したのか、途端にその顔は真っ赤に染まり、拒絶の意思を見せた。
「ばっ、馬鹿者! 何をする!」
「ああ、悪い」
「本当だろうな? なら、この腕を離せ」
「……えーと」
正直、悪いとは思っていない。
けれど。
ここで止める気は俺には無かったし、何よりクリスだって……そのどこか曖昧な表情を見る限り、まんざらでもなさそうだ、と自分の中で解釈しておくことにする。
なので、
「悪いと思ってる。だから、離さない」
そう、きっぱりと宣言しておいた。
……そうして。
結局、荷を取りに戻るのは日が傾き始めてからになったのだった。
来源:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=1062386
もちたんのつぶやきで今日がクリスの誕生日だということを思い出し、クリスと新で何か書こうと思いました。数分後、いくら何でも残り1時間じゃまとめるのは無理だと悟りました。無計画ここに極まれり。…なので、C78で発刊した『ためしよみ±0』からちょっと書き加えたりしてみましたよ、というお話です。
声とか。
感触とか。
温もりとか。
吐息とか。
――心地よい、疲労とか。
ぼんやりと。
そんなことを頭の中で思い描きながら、意識は覚醒した。
「……う」
昨晩に色々と無茶をしたからか、思っていた以上に身体中がだるさを訴えている。
だるいだけならまだしも、まだ、猛烈な眠気が襲ってきて――覚醒したばかりの意識が、早々に持って行かれそうになって。
それでもいいのかなあ、と思いながら……
「……た」
気のせいだろうか。
さっきから、心地良い揺らぎが続いている。
「新。起きろ、新」
気のせいだろうか。
さっきから、誰かの声が聞こえている、気がする。
「いい加減にっ……」
気のせいだろうか。
さっきからの揺らぎと声が途切れた、よう、な……
「起きろ馬鹿者っ!」
唐突に。
罵声と共に、布団が捲り上げられた。
「うおっ!」
何事かと周囲を見渡すと、こちらを睨むクリスの姿が目に入った。
「何度起こせば気が済むんだ! もう時間が無いんだから早く起きろ、この馬鹿者!」
「いや、その……ゴメン」
いきなりまくし立てられて、とりあえず謝ってしまう。
「まったく。休みまで叩き起こす方の身にもなってほしい」
「……ん?」
それを聞いて、ふと気付く。
今日は何も予定が無かったはずだ、と。
「そういや、何で起こしてくれたんだ?」
「忘れたのか? あちらに戻って荷物を取って来たい、と言ったのは新だろう」
そういえば、そんなことを言った気もする。
けれど。
それは別に、急ぎでどうこう、という話ではない。
何より、
「……どうした?」
今のクリスは、一糸纏わぬ生まれたままの姿で。
起き抜けの意識をあらぬ方向へ向かわせるには、十分すぎる。
ならば。
「起きないのか? 僕は別に止めないが」
「いや、起きる」
「そうか。それなら僕は先に行く……」
「起きる、けど」
言いながら、俺はクリスの腕を掴む。
そしてそのまま、思い切り自分の方へと引っ張った。
「なっ!」
突然のことにバランスを崩してか、クリスはあっさりと俺の方へと倒れこんでくる。
それをしっかりと抱きしめて、そのまま軽い体をベッドに押し倒した。
「っ!」
一瞬、クリスはわけがわからないという表情を浮かべる。
けれどすぐに俺の行動の理由を理解したのか、途端にその顔は真っ赤に染まり、拒絶の意思を見せた。
「ばっ、馬鹿者! 何をする!」
「ああ、悪い」
「本当だろうな? なら、この腕を離せ」
「……えーと」
正直、悪いとは思っていない。
けれど。
ここで止める気は俺には無かったし、何よりクリスだって……そのどこか曖昧な表情を見る限り、まんざらでもなさそうだ、と自分の中で解釈しておくことにする。
なので、
「悪いと思ってる。だから、離さない」
そう、きっぱりと宣言しておいた。
……そうして。
結局、荷を取りに戻るのは日が傾き始めてからになったのだった。