日立温 (迈向大和抚子之路)
MF文庫の新人賞優秀賞作品。
賛否両論の作品ということで読んでみましたが、私は否定側の感想を持ちました。
巻末で二語十先生が「評価が割れる大きな理由はキャラクター」と書かれていますが、読んでいて私も同じ感想を抱きました。
主人公のキャラが好き嫌い分かれるとありますが、私は好きでも嫌いでもなく、そもそも興味があまり持てませんでした。
というのもこの幽鬼というキャラクターに限らず、登場人物皆、背景が全く描かれないからです。
デスゲームに参加した理由、参戦するまでに至った経緯、現実世界にいた頃の生活、その全てが恐らくは意図的に排除されて書かれています。
主人公の幽鬼は若干日常生活の描写もありますが、デスゲームに参加しているのは、全うな社会生活を送れなくて何となく、みたいな結構軽いノリです。
何か使命があってとか、そういう感じではありません。
これしか出来ないから、仕方なくやってるみたいな。
我々社会人が仕事に対して抱いてる感覚とあまり変わりません。
この時点で感情移入はしにくいと思います。
最近は女同士のエモい関係性の作品が増えていることもあり、本作も覚悟完了した主人公の女の子がデスゲーム中に他の女の子と関係性を構築し、自分の信念を曲げるか葛藤して、他の子たちを助けたり助けられたりする、そういう話なのかなと勝手に想像していました。
ですが登場人物皆、特に掘り下げもないまま登場して、気づいたら退場しているので、知らない子がいつの間にかいなくなってる……以外の感想はありませんでした。
旧来のデスゲームもののような極限状態での人間関係のやり取りや、ドラマチックな展開みたいなのを期待してもこの作品には全くありません。
覚悟完了してるデスゲームのプロの主人公がゲームを粛々とクリアする格好良さがあるかと言うと、特にそういうこともありません。
淡々と進んで、淡々とキャラが退場して、淡々と終わっていった印象でした。
旧来のデスゲームものにはない新しい切り口なのかもしれませんが、結局この作品、何を見せたいんだ…?と読み終えた後に困惑してしまったのが正直なところです。