この十数年、マンガ家たちは日常生活の延長上に社会を描くか、架空の未来の中に社会を描くことしかしてこなかった。ほんの少し前、まだ近代化・均質化という強大なローラーに押しつぶされない社会では、澱み、屈折し、それ故に噴出しそうにもなる情念を人は抱えていた。今、逆に、失われたその手触りや匂いを求めて、東南アジアやアフリカへ旅行する人が増えている。物見遊山は、それはそれでよかろう。だが、もっと得心のゆくものが、勝又進の短編の中に見つかるはずだ。
呉智英(解説より)
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呉智英(解説より)