内田康夫サスペンス　湯布院殺人事件 日剧

　湯布院に明和大学が建設中の「生涯教育センター」で、文部事務次官の個人秘書が首吊り自殺をした。事件の裏に、大学が裏金をもらって文部事務次官の天下り先を用意しようとした事実があることを知った、明和大学法学部教授・和泉直人は、これに憤慨。大学の理事長に楯突き、辞表を提出する。

　数日後、直とは友人らが開いた慰労会の席で九州旅行をプレゼントされ、妻・麻子と共に大分の空港に降り立つ。アナウンスで「お子様がお待ちでございます」という謎の呼び出しを聞き、指定の場所に向かうと、雄一という６歳の見知らぬ男の子がいた。雄一は母親から託された直人宛の手紙を持っており、そこには湯布院の旧家・高梨竜太郎の家まで雄一を連れて行ってほしいという依頼が書いてあった。母親が誰なのか、なぜ直人に雄一を託さなければならないのか?全く心当たりがないまま、直人らは湯布院の高梨家へ向かう。

　高梨家は、当主・竜太郎が病に臥しており、膨大な遺産をめぐる相続争いの渦中にあった。竜太郎の長男・弘一は３年程前に東京で亡くなっていたが、そこに弘一そっくりの雄一が現われ、弘一の息子であることを証明する戸籍謄本を取り出すと、高梨家の人々は殺気立つ。長女・夏美夫婦、次女・秋野夫婦、そして竜太郎の弟・政次郎は、遺産の分け前を守ろうと必至になり、雄一が弘一の息子であることを認めようとしない。しかし三女の春香だけはそれを認め、雄一を守ろうとするのだった。竜太郎の意向で雄一は高梨家に留まることとなり、事情が明らかになるまで直人たちも滞在することを決める。　数日後、直人は夏美の夫・竹西に呼び出される。待ち合わせの喫茶店に現われた竹西は、示談書を取り出す。そして雄一が竜太郎から受け取る遺産の権利を放棄することを認めるよう、後見人として直人に署名を求める。その報酬に百万円を渡そうとする竹西に憤慨した直人は、「馬鹿にするな」と言い残し、その場を立ち去る。


　その翌朝、家の敷地内で竹西の死体が発見される。直人は、前日に竹西との口論を目撃されており、また帰宅した時間が犯行時刻にぴったりだったことから、直人は警察に連行される。そこへ直人の教え子で、今は大分地検の検事である谷口が現れる。谷口のおかげで警察から解放された直人は、麻子と予定していた観光巡りに出掛ける。麻子は岡城址で、高梨家のお手伝い・大木桂子に似た人物を目撃する。家事や看病で忙しい桂子がこんなところにいるはずがない、と２人は気にも止めなかったが、翌日、高梨家の裏の雑木林で桂子の変死体が発見される。