僕の生きる道

ep.8 二人だけの結婚式

时长: / 首播:2003-02-25
 秀雄(草なぎ剛)はみどり(矢田亜希子)と結婚することを金田医師(小日向文世)に報告した。「明日、結婚の挨拶に行きます」。その頃みどりは父親の秋本(大杉 漣)に秀雄の病気のことを打ち明けていた。「手術も無理で、もう治らないの」。娘の結婚を心から喜んでいた秋本の表情が曇った。「どうして死ぬとわかっている男と結婚するんだ」父と娘の考え方はどこまでも平行線のままだった。
 翌日の食事会は重苦しい空気に包まれた。「みどり先生と結婚させて下さい」。秀雄に頭を下げられた秋本は穏やかな口調ながら、きっぱりと言った。「申し訳ないけど、結婚には賛成できないんだ」。秀雄も娘の幸せを祈る秋本の気持ちが痛いほど理解できた。「お父さん、すぐに中村先生と暮らしたいの」。家を出て行くみどりを、秋本は止めなかった。
 みどりは秀雄の部屋で一緒に暮らしはじめた。みどりは秀雄と付き合っていることを職員室で公言した。「ええっ!」。大声を出したのは岡田(鳥羽潤)だけ。他の同僚たちはそれとなく察していた。
 秀雄は3年G組に向かった。3年生になって最初の生物の授業だ。最前列の吉田均(内 博貴)が突然「落ちつかないんです」と席替えを要望した。均は勝手に机を動かし始め、田中守(藤間宇宙)ともみ合いになった。「受験のストレスじゃない?」。秀雄が麗子(森下愛子)に話すと彼女も同意見だった。均は前回の模試で成績がかなり落ちていたのだ。「頑張りすぎて出口が見えないんでしょう」。秀雄も小学生の時に似た経験を味わったが、教会の聖歌隊に参加することで救われた。みどりがにっこり笑った。「次にやること、決まりましたね」。
 秀雄はホームルームで生徒たちに合唱を提案した。「今日から放課後に体育館で歌を歌いませんか?」。しかし生徒の大半は無関心。結局やって来たのは歌手を夢見る杉田めぐみ(綾瀬はるか)だけ。「そろそろ始めましょうか」。指揮は秀雄、ピアノはみどり。譜面を手にしためぐみはキラキラした表情で歌いだした。
 「先に帰ってくれませんか」。秀雄はみどりに内緒で秋本を訪ねた。「理事長には、おめでとうを言ってもらいたいんです」「みどりが結婚すると言ってきかないのは、分かる。でも君はどうして?みどりの将来を考えたら、こうはならないんじゃないの?」。秋本の口から最後まで結婚を認める言葉は出なかった。
 「おめでとうございます」。翌朝2人は同僚教師たちに結婚を発表した。結婚式はみどりの提案で秀雄が子供の頃に通っていた教会であげることにした。「じゃあ将来は中村先生が理事長ですか?」「当たり前じゃん」。秀雄の病気を知らない岡田と赤井(菊池均也)は真顔で言った。そっとその場をはずした麗子を久保(谷原章介)が追った。麗子は屋上で泣いていた。「結婚だなんて、あまりにもステキで」。麗子は久保の胸に顔をうずめた。
 教頭の古田(浅野和之)は秋本から秀雄の病気の事を聞きショックに固まっていた。「できる限り教師を続けられるよう、配慮してやってほしい」。秋本は苦しい胸の内を打ち明けた。「娘のこととなったらこのザマだよ。僕は彼の余命を知った途端、差別的な目で見ている。立派な教育者だなんて、ちゃんちゃらおかしいよ」。秋本は自嘲気味につぶやいた。
 みどりは秋本が風邪で寝込んでいると古田に教えられ実家に帰った。リビングには少女時代のみどりを撮影した8ミリビデオが出しっぱなしになっていた。「来てたのか」パジャマ姿の秋本が出てきた。「お前はこの悲劇的な状況に酔っているだけだ」「私は自分自身の人生を生きたいの」。みどりに背を向けた秋本はただ黙っていた。
 2人だけの結婚式が明日に迫った。秀雄は母親の佳代子(山本道子)に電話で知らせた。「しっかりね。とちらないように、母さん祈ってるから」。秀雄はみどりに代わった。「みどりさん、ありがとう。本当にありがとう」。みどりも父親に電話したが、留守番電話に切り替わった。「明日2人で結婚式をあげます」。秀雄に代わった。「今は僕達のことを信じて下さいとしか言えません」。秋本は2人の声を聞いていた――。

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