信濃のコロンボ事件ファイル４　戸隠伝説殺人事件 日剧

　長野県の建設・不動産業界に君臨する大物、武田建設会社社長・武田喜助の死体が、戸隠の毒の平（ぶすのだいら）で発見された。死後２～３日経過しており、その後の調べで、死因は青酸性の毒物による中毒死で、別の場所で殺害されて運ばれたと推定される。

　武田は、失踪した日の７月１５日の夜、戸隠高原ホテルで開かれた「戸隠ゴルフ場建設促進祝賀会」に出席したが、その懇親パーティーの途中で急に「気分が悪くなった」と言って６時すぎに部屋に引き上げ、その１時間後の７時、ホテルから外出するところを目撃されたのを最後に行方不明となっていた。

　現場に到着した県警警部"信濃のコロンボ"こと竹村岩男は、武田の秘書にパーティー会場での武田の様子を聞く。すると、パーティ会場に後から現われた一人の男が武田に会釈をしたとたん、武田は慌てたように受付名簿の名前を確かめに行き、その男が「立花智弘」だと知ったとたん、武田の顔色が変わり、「部屋にひきあげる」と言い出したという。

　警察が武田の素性を調べると、武田は元の苗字を「徳岡」といい、戸隠地方の農家の三男坊だったが、武田家に婿入りしていた。しかし、家庭内は不和で、仕事上でも敵が多く、容疑者の絞り込みは困難を極めた。

　その後、武田が宿泊していたホテルの部屋から見つかったメモの筆圧痕から、武田が探偵社に「立花智弘」の調査を依頼していたことが判明する。竹村は立花智弘とは何者なのか、調査を始める。　

　「立花智弘」は、東京の東洋文化大学の名誉教授で、古典文学を専門にしていた。そして昔、戸隠を鬼女・紅葉（もみじ）が支配しており、それを平惟茂が退治したという、歌舞伎や能でも取り上げられている「戸隠伝説」の研究者であった。竹村は、今回の事件と戸隠伝説の奇妙な一致に気付く。武田の死体が発見された"毒の平"は、伝説では鬼女・紅葉が宿敵・平惟茂に毒をもった場所であり、武田もまた毒殺され、わざわざ毒の平まで運ばれていた。

　東京にある立花の自宅を訪ねた竹村は、武田との関係を訊ねるが、立花は武田のことを「知らない」という。しかし、竹村は立花が何かを隠しているのではないかと感じる。

　そんな中、戸隠・西之矢にある矢先神社で、広告会社社長・石原隆二の毒殺死体が発見される。石原はホテルのパーティにも出席したゴルフ場建設推進派の一人だった。死体の胸には白羽の矢が突き立てられていたが、死因は武田と同じ"毒殺"で、殺害現場も別の場所とみられた。その後、平惟茂が紅葉を追い詰めるために射った矢が突き刺さった場所が"西之矢"だったとわかり、死体に刺さった矢は、またもや「戸隠伝説」に絡んでいることが判明する。竹村は、伝説になぞらえた復讐劇と睨み、第３の殺人事件を危惧する。

　一方、立花は主催した「紅葉狩鑑賞会と戸隠歴史紀行」に参加していた東洋文化大学の女子学生・野矢優子と出会う。優子は戸隠伝説にとても詳しく、そして立花と初対面であるにも関わらず、何故か立花が「元子爵」であることを知っていた。しかも優子は、立花の忘れられない女性と面影がそっくりだった。　　優子のことが気になる立花は、その後再び優子に会いに行く。優子は子供の頃から、立花の名前を知っていたのだという。優子の家には、古い古語辞典があり、そこには『昭和１９年冬　最愛のきみに贈る・立花智弘』と書かれており、優子は、「立花という人は元子爵さまで、昔戸隠で暮らしていた」と母親から聞いていたのだという。そして、優子の家が代々、戸隠の天道家の雇い人だった、と聞いた立花は何故か驚く。立花の脳裏に、６０年前の思い出が蘇る。

　立花、武田、石原を繋ぐ接点とは？そして起こる第３の殺人事件…「戸隠伝説」にまつわる封印された過去の真相究明に、"信濃のコロンボ"が挑む。