Night Times

平田義久が次に挑んだのはずばり「Mellow」。
　　これまでにも「計画停電の夜に」（2016）や「夜がはじまる」(2018)など、夜のロマンティックな一幕を描いた曲を発表してきたが、本作はそれをコンセプトに掲げて編まれた作品集だ。
　　ファンキーなギタートラックでゲキヤクが巻き舌混じりに啖呵を切るように歌い、JOLNOがクールなラップで繋ぐ冒頭の「東京は夜」。雨に濡れながらじゃれ合う場面を描く「雨の夜」はピアノ主体のヒップホップでありながら、協奏曲的なアレンジでラストを甘く締める。ねこむら（cat nap）と初音ミクのコーラスが映えるビタースウィートなネオソウル「moonchildren」。リバーブがかかったシンセが作り出すチルな空気感と瑞々しいサウンドのポップスが合わさった「fallin' fallin」。FKJを彷彿とさせるジャズ・R&B・ディスコを基調としたメロウなビートに加え、サビ後に華やかなドロップを配した「close your eyes」。80-90年代のR&B・スロージャムのサウンドを意識しつつ、現代風に甘すぎず軽やかなアレンジを施した「stay with me」。また、ボーナストラックとしてこれまでに発表してきた曲やカバーも収録している。
　　いずれの曲もヒップホップやR&B、ソウル、ジャズなどを下地に平田義久らしさが存分に表れた折衷なアレンジが施されており、多彩な夜の歌を紡ぎ出している。平田義久の新たな幕開けを感じる、要注目のアルバムだろう。